石川啄木(たくぼく)の第二詩集。1911年(明治44)6月15日から27日にかけてつくられた、「はてしなき議論の後」「ココアのひと匙(さじ)」「激論」「書斎の午後」「墓碑銘(ぼひめい)」「古びたる鞄(かばん)をあけて」「家」「飛行機」の八編の詩からなり、啄木の死後友人の土岐哀果(ときあいか)(善麿(ぜんまろ))によって13年(大正2)5月東雲堂書店から刊行された『啄木遺稿』によって初めて紹介された。詩集としては未完成であるが、幸徳秋水らの大逆事件直後のいわゆる社会主義の「冬の時代」のなかから生まれたもので、啄木の社会主義への憧憬(しょうけい)と芸術的達成を示す佳作として広く注目され、日本の近代詩に新生面を開いた。
[岩城之徳]
『『復刻版 呼子と口笛』(1975・盛岡啄木会)』▽『小田切秀雄編『啄木詩歌』(1981・第三文明社)』
…11年,慢性腹膜炎と診断され,ついで妻も母も罹病。時代の悪化もあって絶望を深めつつも,なお遺稿の文語自由詩《呼子と口笛》に現実飛翔の夢を歌いあげ,12年4月,貧窮の底で死んだ。〈東海の小島の磯の白砂に/われ泣きぬれて/蟹とたはむる〉(《一握の砂》)。…
※「呼子と口笛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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