ココア(読み)ここあ(英語表記)cocoa

翻訳|cocoa

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ココア」の意味・わかりやすい解説

ココア
ここあ
cocoa

カカオ種子(カカオ豆)を炒(い)ってすりつぶし、脂肪の一部を除いたあと粉砕したもの。ココアということばはカカオcacaoからきたもので、カカオはアステカ人(メキシコ)のカカウァトルが語源である。ココアは、アメリカ大陸「発見」以前からメキシコ先住民の間で飲まれていた飲料で、木(または実)をカカウァトル、実を砕いてどろどろにした黒い飲料をチョコラトルと称していた。この飲料はスペイン人エルナン・コルテスによって16世紀の初めごろヨーロッパへ紹介された。1828年オランダのバン・ホーテンCoenraad Johannes Van Houten(1801―87)が、カカオ豆の脂肪分を減らして、水に溶けやすい粉末を発明し、ココアの名前で売り出したのが、現在一般に飲まれているココアの始まりである。バン・ホーテンはココアの代名詞のごとく世界中に知られているが、そのほか、ネスレ(スイス)、ハーシー(アメリカ)、キャドブリ(イギリス)、ペンス・ドーフ(オランダ)などの銘柄がある。

河野友美大滝 緑・山口米子]

製造

木から切り落とした果実は殻の中に種子(豆)が詰まっているので、それを取り出し、豆の周囲に付着している果肉を発酵乾燥して取り除く。果肉は多汁質なので、そのまま置くと腐敗する。この乾燥した種子がカカオ豆である。

 ココアをつくるのには、この豆を褐色になるまで焙焼(ばいしょう)する。焙焼は風味に非常に関係するのでいちばんだいじな工程となっている。次に粉砕して種皮を除去し、残ったものだけをひいて、どろどろにする。これがカカオマスで、チョコレートの主原料となる。ココアはカカオマスに圧力を加えて脂肪分(カカオバター)を一部除き、残りを微粉砕して乾燥したものである。ココアには軽い興奮作用をもつテオブロミンが2%近く含まれている。また、カフェインもわずかに含む。

[河野友美・大滝 緑・山口米子]

いれ方

ココアには、何も加えていないピュアココア(純ココア)、粉乳を配したミルクココア、砂糖、粉乳などを合わせ、かつ溶けやすくしたインスタントココアなどの調整ココアがある。ピュアココアでは、鍋(なべ)にココアを入れ、熱湯をすこしずつ加えながらペースト状になるまで練る。これに砂糖を加え軽く混ぜ合わせて中火にかけ、2~3分間攪拌(かくはん)しながら煮て、つやが出てきたら牛乳を注いでさらによく混ぜ、沸騰する直前に火からおろし、泡立てた生クリームを加えて供する。ピュアココアはタンパク質19%、脂肪22%、炭水化物42%を含み、鉄、亜鉛など無機質、ビタミンB類、食物繊維なども豊富である。クリームや牛乳、砂糖を加えた飲料のココアは高エネルギーで栄養価が高い。

[河野友美・大滝 緑・山口米子]

『福場博保・木村修一・板倉弘重・大澤俊彦編『チョコレート・ココアの科学と機能』(2004・アイ・ケイコーポレーション)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ココア」の意味・わかりやすい解説

ココア
cocoa

チョコレートの原料になるカカオペーストを圧搾して相当量のカカオバターを除き粉砕したもの。ココアが飲用に供されるようになったのは,1828年オランダのバンホーテン社がチョコレートパウダーの製法特許を取り,その後消化と分散性をよくするためアルカリ処理の有効なことを発見してからである。ココアは紅茶,コーヒー,コーラなどと同様アルカロイド飲料であるが,大きく異なる点は含脂量 (約 20%) の高いこと,興奮作用と利尿作用をもつテオブロミン (1.1%) が含まれるが,その作用が穏やかなこと,カフェインが少いことである。含脂量から,次のように分類される。ブレクファストココアまたはピコアココア (含脂量 22~24%,飲用) ,中脂ココア (同 10~22%,飲用と製菓原料) ,低脂ココア (同 10%以下,製菓原料) ,脱脂ココア (同 0.2~0.5%) 。

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