日本大百科全書(ニッポニカ) 「哲学ノート」の意味・わかりやすい解説
哲学ノート
てつがくのーと
三木清(みききよし)の哲学論集。雑誌『知性』に1939年(昭和14)1月から9月まで8回にわたって連載され、41年に「序」を付して出版された。当時三木は『構想力の論理 第一』の続編を執筆中であったが、本書はそうした体系的な著述のかたわらで書き進められたものである。内容は「世界史の哲学」「論理と心理」「主体的」「観想と実践」「驚異」など27項目にわたる。短いものは「古典」の一行、長いものは「実体 関係 形態」の十数ページというように形式にこだわらず自由に論じられているが、三木自身が「序」でいうように「如何(いか)にして、また何故(なにゆえ)に、私が構想力の論理といふものに考へ至らねばならなかったかの径路」が、直接間接に示されている。それは、「社会」のうちにある「身体」を有する「主体」としての人間が、「技術」を通して「実践的」に「具体的な形」を創造していく「形の哲学」と要約できる。そのような立場から、三木は哲学上のさまざまな対立を統一しようと試みている。
[渡辺和靖]
『『哲学ノート』(新潮文庫)』