家庭医学館 「喉頭摘出後の代用音声」の解説
こうとうてきしゅつごのだいようおんせい【喉頭摘出後の代用音声】
悪性腫瘍(あくせいしゅよう)(がん)などで喉頭を摘出しなければならない場合があります。喉頭摘出術では、気管の切断端を皮膚と縫合して気管孔をつくり、ここから呼吸をします。この場合、喉頭を摘出してしまうので、声を出すことができなくなります。
しかし、喉頭を使った発声ができなくなっても、会話ができなくなるということではありません。以下にあげる方法で声(代用音声)を取りもどすことができます。
●笛式人工喉頭(ふえしきじんこうこうとう)(タピア式人工喉頭(しきじんこうこうとう))
気管孔に振動膜(しんどうまく)のついたチューブを当て、息で吹き鳴らして音をだします。
この音をチューブで口の中に響かせて会話をします。
●電気式人工喉頭(でんきしきじんこうこうとう)
くびのやわらかい部分にバイブレーターを当て、振動を深部の組織に伝えると、咽頭粘膜(いんとうねんまく)が規則的に振動して代用音声をつくります。器械の当て方や明瞭(めいりょう)な発音動作の工夫が必要です。
●食道発声(しょくどうはっせい)
器具を使わないでもすむ方法です。
口から食道に取り入れた少量の空気を逆流させ、げっぷに似た音をだし、この音を利用して発話します。練習が必要ですが、上達すると、自然で明瞭度の高い声になります。
●気管食道瘻発声(きかんしょくどうろうはっせい)(シャント発声(はっせい))
手術をして、気管から食道に細い空気の通り道(シャント)をつくり、気管切開孔を指で閉じ、呼気(こき)(はく息)を食道に送り込むことによって、食道発声と同じ音源部分を呼気で振動させることができます。
◎喉頭摘出者が受けられるサービス
喉頭を摘出した人は3級の身体障害者と判定され、笛式人工喉頭の無償交付、電気式人工喉頭購入の助成などが受けられます。
また、各地で発声教室が開催されていて、代用音声熟練者のボランティアが発声の指導にあたっています。
言語聴覚士(げんごちょうかくし)による発声指導を病院内で行なっている医療機関もあります。
喉頭摘出後の音声リハビリテーションは、その人にもっとも適した代用音声の種類を選ぶことから始まります。
専門家の指導は、より簡便で明瞭度の高い発話への近道です。日本喉摘者団体連合会では、喉頭摘出後の音声リハビリテーションに関する相談を受け付けています。