四元ベクトル(読み)よんげんベクトル(その他表記)four-vector

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「四元ベクトル」の意味・わかりやすい解説

四元ベクトル
よんげんベクトル
four-vector

特殊相対性理論における四次元空間 (ミンコフスキー空間 ) のベクトル。3個の空間成分と1個の時間成分とをもち,ローレンツ変換によって四次元空間の座標 (xyzt) と同じ変換を受ける。三次元空間の速度ベクトルv とし, とすると,(γvx,γvy,γvz,γ) は四元ベクトルで,これを四元速度という。ただし c は真空中の光速度である。四元速度と静止質量 m0 との積 (m0γvxm0γvym0γvzm0γ) は四元ベクトルで,これを四元運動量という。その時間成分と c2 との積は物体相対論的エネルギーである。三次元空間の力のベクトルを f とすると,(γfx,γfy,γfz,γ(fv)/c2) は四元ベクトルで,これを四元力という。その時間成分と c2 との積は物体になされる仕事率である。電流密度と電荷密度とは四元ベクトルをつくり,四元電流と呼ばれる。電磁波ベクトルポテンシャルスカラーポテンシャルは四元ベクトルをつくるが,電場ベクトルと磁場ベクトルとは,四元ベクトルの空間成分ではなく,ミンコフスキー空間における2階の反対称テンソルの成分である。

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改訂新版 世界大百科事典 「四元ベクトル」の意味・わかりやすい解説

四元ベクトル (しげんベクトル)
four-vector

相対性理論においては時間は絶対的な意味をもたず,空間座標xix1xx2yx3zx2は2番目のx座標という意味で,xの2乗ではない)と対等な座標であり,x0ctと書かれる(cは光速度,tは時間)。三次元的な空間ベクトルxix0を加えて,四次元的なベクトルxμ(μ=0,1,2,3)を考え,略して四元ベクトルと呼ぶ。ローレンツ変換は,この四元ベクトルに対する一種回転と考えることができる。四元ベクトルのもう一つの例としては,運動量の3成分piに,エネルギーEcで割ったものp0E/cを第4成分として加えたpμがある。これにローレンツ変換を施すと,運動量とエネルギーが(空間座標と時間が移り変わるように)互いに移り変わることがわかる。質量とエネルギーに関するアインシュタインの関係式は,pμが四元ベクトルであることから導かれる。
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