日本大百科全書(ニッポニカ) 「回春剤」の意味・わかりやすい解説
回春剤
かいしゅんざい
中年、老年の者が若さを回復させる薬剤。若々しさを永久に保ち人生をつねに青年のように活動的にあらしめたいという不老不死、若返りの夢は、古今東西の人間の共通の願いであるが、現実は加齢とともに老いてゆく。それを、薬剤の助けを借りても実現しようと、古代中国、インド、エジプト、ギリシア、ローマ、イスラムなどで本格的に研究された。中国の唐では太宗(たいそう)をはじめ幾人もの皇帝が、不老長生の丹(たん)薬を常用したため中毒死したほどである。若返りの薬剤とは強壮剤が基本のはずだが、セックスが若さのだいじなバロメーターであるため、強精剤、補精剤はもちろん、催淫(さいいん)剤、媚薬(びやく)などの性欲促進剤をも回春剤とみなすようになる。こうした回春剤は、原料を動植物のなかから探究のすえに選び出し、単独で、あるいはさまざまな調合でつくられ、製法は秘法とされてきたが、現代では性ホルモン、ビタミン類などの生化学薬品ができている。
[深作光貞]