翻訳|tonic
栄養素以外の物質で薬物として用いることによって生体の物質代謝を促進し体力を増進する物質を呼ぶが,薬理学的に明確な定義はない。さらには胃粘膜を刺激し食欲を増進させ消化液の分泌を促す物質も含める場合がある。物質代謝促進の考えから用いられたものに,ヒ素製剤,リンおよびリン酸化合物,キナ製剤および生薬,鉄剤,ヨウ素剤,甲状腺剤,カルシウム剤,さらには紅参(チョウセンニンジンの根を蒸したもの)や人参(チョウセンニンジンの根)などの各種生薬がある。これらの作用機構は異化作用の抑制などに求められるものもあるが,明確でないものが多い。古くは結核や梅毒など瘦削性の疾患(体がやせてくる病気)に対して用いられたが,化学療法や抗生物質などの著しい発達により原因療法が可能となってきた現在では実用上の価値は減じてきた。食欲増進,消化吸収の促進をはかるものとしては,少量のアルコール性飲料,健胃薬(ゲンチアナ,竜胆,当薬(千振),ホミカ,苦木,黄連,コロンボなどの苦味健胃薬,苦味チンキなどの配合健胃薬がある),リモナーデlemonade(少量の酸とブドウ糖やシロップを混合したもの,さらにブドウ酒を配合することもある)などがあげられる。強壮効果をうたった各種の飲料が市販されているが,多くはアルコール,カフェイン,各種ビタミン類,あるいは生薬などを配合したものである。
執筆者:重信 弘毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
新陳代謝機能の回復、栄養状態の改善、補血、強精、疲労回復など、広い意味での病体の一般的改善を目的とした薬剤をいい、変質強壮剤、苦味強壮剤、補血強壮剤、滋養強壮剤などがある。変質強壮剤とは体質を改善するという意味で、亜ヒ酸剤などがある。苦味強壮剤には胃液の分泌を促す苦味剤としてキナ製剤が、補血強壮剤には鉄剤がある。滋養強壮剤は栄養によって機能の回復を図るもので、各種ビタミン剤、タンパク質、炭水化物、ミネラル、アミノ酸などがあげられる。漢方では人参(にんじん)がよく用いられる。最近では滋養強壮剤だけが栄養剤を含めて用いられ、薬用酒やドリンク剤がよく使われる。
[幸保文治]
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