日本大百科全書(ニッポニカ) 「国民経済バランス」の意味・わかりやすい解説
国民経済バランス
こくみんけいざいばらんす
balance of the national economy 英語
баланс народного хозяйства/balans narodnogo hozyaystva ロシア語
国民経済の現実の、あるいは理論上の再生産過程を表形式で表示するもの。この先駆的業績は、ケネーの経済表、マルクスの再生産表式にさかのぼることができる。1917年社会主義社会の誕生とともに、それまで主として経済分析の手段として利用されてきた再生産表式は、国民経済の計画的運営の用具として改良、利用されるようになった。国民経済バランス表体系は、資本主義諸国における国民経済計算と産業連関表をあわせたものに相当し、個々の生産物の需給バランスや資金の収支バランスのほか、財循環や資金循環および両者の相互関係をとらえるのに利用された。
バランス表には、事後表としての報告バランスと、事前表としての計画バランスとがある。旧ソ連では、前者は中央統計局、後者はゴスプランがその作成を担当した。旧ソ連を含むコメコン諸国の国民経済バランス標準方式は、次のようになっていた。
(1)社会的総生産物の生産・消費・蓄積バランス(物財バランス)。
(2)社会的総生産物および国民所得の生産・分配・再分配および最終利用バランス(財務バランス)。
(3)労働力バランス。
(4)国富および固定フォンド・バランス。
上記の各表は主表と一連の補助表からなっており、産業連関表はこの国民経済バランス体系には含まれていないが、別に研究委員会が組織され、その研究・応用が盛んになった。コメコンのこの統一国民経済バランス表体系は通常MPS(Material Product System)とよばれ、国連の標準方式SNA(System of National Accounts)との相互変換方式が研究されていた。
[望月喜市]
『望月喜市著『ソ連経済の再生産構造――その統計的研究』(1984・多賀出版)』