改訂新版 世界大百科事典 「圧電性磁器」の意味・わかりやすい解説
圧電性磁器 (あつでんせいじき)
piezoelectric ceramics
機械的振動と交流電場との交換を行う圧電性材料を,セラミックスで作ったもの。物質としては,PbZrO3とPbTiO3との固溶体(PZTと略称),あるいはPZTにPb(Mg1/3Nb1/3)O3,Pb(Mn1/3Sb1/3)O3,Pb(Co1/3Nb1/3)O3などを加えているものが多い。これらの固溶体の結晶構造はペロブスカイト(CaTiO3)型でありABO3と略記される。Aには大きいイオンであるPb2⁺,Ba2⁺,Sr2⁺,Ca2⁺などが入り,Bには小さいイオンであるTi4⁺,Zr4⁺,Hf4⁺,Mg2⁺,Nb5⁺,Mn2⁺,Sb5⁺,Co2⁺などが入るが,原子数の比がA:Bで1:1でありさえすれば同じ結晶を保てるから,所望の物性値に応じた組成の固溶体を選択・合成できる利点がある。単結晶材料を使うより安価であり,所望の形状・寸法のものが作りやすく,大量生産が可能などの利点もあるので,工業的に生産されている圧電材料のほとんどはセラミックスの形態のものである。圧電性を利用して圧電着火,電波フィルター,超音波発振および受信ができるので,テレビジョンおよびリモコン装置,スピーカー,マイクロホン,レコードプレーヤーのピックアップ,通信材,計算機,流量計,魚群探知機,超音波探傷機,医療診断,地震予知,超音波洗浄器,ガスライターなどの重要な部品として使われている。
→圧電気
執筆者:柳田 博明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報