日本大百科全書(ニッポニカ) 「地方創生推進交付金」の意味・わかりやすい解説
地方創生推進交付金
ちほうそうせいすいしんこうふきん
先駆的な地域活性化事業に取り組む自治体に対し、国が事業費を重点配分する仕組み。東京一極集中を是正する目的で、安倍晋三(あべしんぞう)政権が2016年度(平成28)に創設した。地域再生法に基づく補助金の一つである。観光・農業振興策、移住・定住支援策、結婚・出産・育児の支援策、地域社会を担う人材の確保・育成策などをおもな対象とし、2017年度からは新基準として、ロボットや人工知能(AI)を活用した生産性の高い物づくり事業、健康状態や遺伝情報に適した医療・介護サービスの充実策も交付対象となった。国が原則、事業費の2分の1を補助し、残りの2分の1を地方が負担する。当初、1事業あたりの交付上限額は都道府県で2億円(事業費ベースで4億円)、市区町村で1億円(同2億円)であったが、使い勝手の向上を求める自治体の要望を踏まえ、2017年度から交付上限額を都道府県で3億円(同6億円)、市区町村で2億円(同4億円)に引き上げた。効果が期待できる事業には、最長5年間交付する。予算として2016年度、2017年度ともに1000億円を計上しており、2016年度に1201事業、2017年度(10月時点)は1085事業を交付対象に認定した。活用する自治体に対し、目標となる重要業績評価指標(KPI)を設定し、効果を検証・改善するPDCAサイクル手法を利用して効果を点検するよう求めている。
おもな事業として、青森県がヤマト運輸と連携し生鮮食品を東南アジアなどに販路拡大する事業、世界文化遺産に登録された高野山麓(こうやさんろく)を活用した和歌山県の観光振興事業、佐賀県の藻類培養による有用成分の抽出・商品化事業などが認定されている。なお地方創生関係の交付金には、地方創生推進交付金のほか、2014年度補正予算で創設された基礎交付(予算額1400億円)、上乗せ交付(同300億円)、2015年度補正予算で創設の地方創生加速化交付金(同1000億円)などがある。
[矢野 武 2018年2月16日]