坊主憎けりゃ袈裟まで憎い(読み)ボウズニクケリャケサマデニクイ

デジタル大辞泉 の解説

坊主ぼうずにくけりゃ袈裟けさまでにく

その人を憎むあまり、その人に関係のあるものすべてが憎くなるというたとえ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 の解説

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い

お坊さんが憎くなると、身につけていた袈裟まで憎くなる。いったん嫌いとなると、その人に関わりのあるものすべてに嫌悪感をいだく心理のたとえ。

[使用例] 演歌調の歌は〈略〉歌詞の内容が義理だとか、人情だとか、切ったはったの出入りの世界を歌っているものが多く〈略〉坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ということわざどおり、音楽的な価値まで不当に無視されている[服部公一*あなたとくらしと音楽と|1970]

[使用例] ふみ子が登場したとき、第一線の女流歌人のことごとくが、何か嫉妬めいた血走った目で彼女の作品を迎えた。「大いに露出的ですネ、そこがうけているのでしょう」〈略〉坊主憎けりゃ、ケサまでとばかり、中城短歌への反撥意識が、中城を押し出した『短研』への八つ当りとなって現れた[渡辺淳一*冬の花火|1980]

[解説] 「袈裟」は、僧侶が左肩から斜め右下に掛ける法衣で、法事の際に欠かせないものです。ことわざは、僧侶とその袈裟をたとえに、「坊主」と呼び捨てにし、「憎い」とストレートに言い切ることで強いインパクトをもたらしています。誇張表現によって、「あばたもえくぼ」の裏返しの心理を示し、ひいては人間関係全般に作用する心理的メカニズムを鋭くえぐり出しているのはたしかでしょう。
 僧侶は、人々からうやまわれる一方で、ことわざの世界では、「坊主の不信心」や「布施ない経に袈裟おとす」などのしんらつ批判にさらされることも珍しくありません。しかし、ここでは、そうした社会的批判とは別に、愛憎の対象として登場しています。若い僧侶は、安珍・清姫や八百屋お七の話のように、古くから女性のあこがれの的でもあったのです。

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