日本大百科全書(ニッポニカ) 「埋蔵炭量」の意味・わかりやすい解説
埋蔵炭量
まいぞうたんりょう
地表および水底に露出している部分も含めて、地殻内に存在している石炭の量のことをいう。探査が詳しくなれば増加は期待できるが、現時点で全世界の埋蔵炭量の総計は10兆トン余と考えられていて、主として地球の北半球に集中している。南半球では南アフリカ共和国、オーストラリアには石炭があるが量的には全世界の数%である。しかし、地球上には人跡未踏の奥地や陸地周辺の大陸棚の地質状況でも未調査の所もあるので、これらの地域に石炭が発見される可能性は十分ある。したがって調査が進めば、全世界の埋蔵量は十数兆トンにも達するであろう。しかし「炭田」の項にも述べてあるとおり、現在は埋蔵炭量中10~20分の1ぐらいが採掘可能であり、残りは採掘できずに放棄されてしまう。将来は、技術の進歩、時代の要請により、もっと多く掘るようになることが期待される。
ちなみに、わが国では1956年(昭和31)ころ、約200億トンの理論可採埋蔵炭量を計上していたが、その後の30年間で約10億トンを掘り、残りはその後の検討により5億トン程度といわれている。しかし、この5億トンすら現状では採算性の成り立つ経済炭量とは考えにくい。全世界では、明確にいいがたいが1兆数千万トンは可採とみてよい。石油の埋蔵量が石炭換算で約3000億トンというから、石炭はいまなお人類のエネルギー資源として大きな意義をもっている。
[磯部俊郎]