改訂新版 世界大百科事典 「執行異議執行抗告」の意味・わかりやすい解説
執行異議・執行抗告 (しっこういぎしっこうこうこく)
強制執行をする機関が行う各個の執行処分に対する不服申立手段。たとえば,民事執行法131条によって差押えを禁止されている動産について執行官が差押えを行った場合,あるいは執行停止決定を無視して執行裁判所が,債権の差押命令を発した場合,これらの差押えや差押命令は,いずれも手続的に違法なものとされ,執行異議または執行抗告による救済が認められる。不服の対象が個別の処分に限られる点で,執行の基本となる請求権そのものについて争う〈請求異議の訴え〉や,執行力そのものの存在を争う〈執行文付与に対する異議の訴え〉と区別される。
執行抗告が許されるかどうかは,民事執行法に個別的に規定されている(10条1項)。一般的にいえば,(1)民事執行の申立てを却下する決定のように,手続を終了させる効果を持つ裁判,(2)債権差押命令のように,関係人に重大な不利益を及ぼす裁判,(3)不動産の売却許可決定のように,権利関係の変動を生じる裁判,これらに対して執行抗告が認められている。これ以外の裁判に対しては執行異議が認められる。なお執行官の処分に対しては,執行異議のみが許されている(11条1項)。執行抗告に対しては上級裁判所がその当否を審判するが,執行異議に対しては執行裁判所が審判を行う。
→強制執行
執筆者:伊藤 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報