執行文(読み)シッコウブン

デジタル大辞泉 「執行文」の意味・読み・例文・類語

しっこう‐ぶん〔シツカウ‐〕【執行文】

債務名義執行力があることを証明するために、裁判所書記官または公証人が債務名義の末尾に付記する公証文言

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精選版 日本国語大辞典 「執行文」の意味・読み・例文・類語

しっこう‐ぶんシッカウ‥【執行文】

  1. 〘 名詞 〙 債務名義の執行力を証明するため、裁判所書記官または公証人が債務名義の末尾に付記する公証の文言。〔民事訴訟法(明治二三年)(1890)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「執行文」の意味・わかりやすい解説

執行文 (しっこうぶん)

強制執行の基本となる債務名義に執行力が現存することおよびその範囲を公証する文言。執行文の付された債務名義を〈執行力ある正本〉(執行正本と略称することもある)と呼ぶ。具体的には,執行文は,裁判所書記官等が,債務名義の正本の末尾に,債権者がその債務名義に基づいて債務者に対して強制執行ができる旨を付記するという形式付与される。

 執行文の機能は,二つに分けられる。第1は,債務名義の執行力を公証する機能である。確定判決民事執行法22条1号)であっても,再審によって取り消されていれば,執行力が失われるし,仮執行宣言付判決(同条2号)も,判決上級審で取り消されれば,執行力が失われる。したがって,現実に強制執行が開始される前に,これらの債務名義の執行力が現存するかどうかを審査する必要があり,執行文は,この必要を満たすものである。債務名義に表示された請求権が条件付きである場合に,この条件が成就したかどうかを判定するのも,執行文の同様の機能である。

 執行文の第2の機能は,強制執行の範囲を拡大する機能である。債務名義に表示されている当事者ほかに,民事執行法23条1項は,一定範囲の者のために,または一定範囲の者に対して強制執行が行われる余地を認めているが,執行文は,この範囲を具体的に確定する機能を持つ。いわゆる承継執行文が,その例である。

 以上のような機能を持つ執行文は,原則としてすべての債務名義に要求される。ただし,少額訴訟判決,仮執行宣言付支払督促仮差押え仮処分命令については,執行文を必要としない(25条,民事保全法43条1項本文)。これは,この種の債務名義に基づく執行に関して,とくに簡易性および迅速性が強調されるためである。しかし,前述の承継執行文は,この種の債務名義についても要求される。強制執行における債権者または債務者の範囲を拡張する場合には,より慎重に手続を要するというのが,その趣旨である。

 執行文を付与するのは,執行証書については,その原本を保存する公証人,それ以外の債務名義については,事件記録の存在する裁判所の書記官である(26条1項)。これは,執行力の有無に関する調査資料がその手もとにあるという理由に基づいている。いずれにしても,執行官あるいは執行裁判所などの執行機関は,執行文の付与に関与せず,執行文の付与された執行正本に基づく強制執行を実施する責任のみを負う。

 通常の執行文は,上記の付与機関に対して債権者が申立てをなし,審査のうえ付与されるが,請求権が条件付きの場合,および承継執行文を求める場合には,債権者は,文書の提出によって条件成就あるいは承継の事実を証明することが要求され(27条1項,2項),その証明ができなければ,〈執行文付与の訴え〉を提起しなければならない(33条1項)。債務者の側から執行文を付与すべきでないことを主張する手段としては,〈執行文付与に対する異議〉(32条),および〈執行文付与に対する異議の訴え〉(34条)がある。
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百科事典マイペディア 「執行文」の意味・わかりやすい解説

執行文【しっこうぶん】

債務名義執行力が存在すること,あるいは執行力の内容(名宛人や目的物)を公的に証明する文章(民事執行法26条)。判決などの債務名義は正本(裁判所などに保管される原本と同じ効力をもつもの)が当事者に渡されるから,債権者は,この債務名義の正本を公証機関(判決調書のときは事件記録を保管する書記官,執行証書のときは作成した公証人)に提出して,その末尾に執行文を付記してもらい,これ(〈執行力ある正本〉という)を執行機関に提出して強制執行を行うことになる。執行機関が執行力の存在について調査する手数を省くため,こうした公証が必要とされている。
→関連項目請求異議の訴え

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「執行文」の意味・わかりやすい解説

執行文
しっこうぶん
Vollstreckungsklausel

債務名義の執行力の存在ならびに執行の名あて人や目的物などの執行力の内容を公証するために,債務名義の正本の末尾に付記された文言 (民事執行法 26条2項) 。仮執行宣言付き支払命令および仮差押え仮処分命令については,例外的に執行文を要しない。執行文は,債権者の申立てに基づいて,執行証書以外の債務名義については事件記録の存する裁判所の書記官が,執行証書の場合にはその原本を保存する公証人が付与する (26条1項) 。

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世界大百科事典(旧版)内の執行文の言及

【強制執行】より

…この差異は,〈請求異議の訴え〉において債務者が,いかなる範囲の事由を主張できるかという相違としてあらわれる(35条1項,2項)。 また,現実に強制執行を開始するには,債務名義だけでは足らず,それに執行文が付記されなければならないのが原則である(これを〈執行力ある正本〉という)。執行文とは,その時点で債務名義が有効であり,執行力が備わっていることを公証するものである。…

※「執行文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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