民事執行法(読み)ミンジシッコウホウ

デジタル大辞泉 「民事執行法」の意味・読み・例文・類語

みんじ‐しっこうほう〔‐シツカウハフ〕【民事執行法】

民事執行について定めている法律。昭和54年(1979)民事訴訟法強制執行の部分と競売法を統合して制定。

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精選版 日本国語大辞典 「民事執行法」の意味・読み・例文・類語

みんじ‐しっこうほう‥シッカウハフ【民事執行法】

  1. 〘 名詞 〙 民事訴訟法中の強制執行の部分と競売法を統合した新法典。昭和五四年(一九七九)に制定。強制執行及び競売制度合理化近代化を図り、その機能を充実させることを目的とする。

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改訂新版 世界大百科事典 「民事執行法」の意味・わかりやすい解説

民事執行法 (みんじしっこうほう)

民事執行とは,私法上の権利を国家権力の手によって強制的に実現することをいう。民事執行法は,このようなものとして,(1)強制執行,(2)仮差押え仮処分の執行,(3)担保権実行としての競売,および,(4)形式競売,について規定した法律である(1979公布)。その後,民事保全法の制定(1989)にともない,仮差押えと仮処分の執行についての規定はそちらに移されることとなった。沿革的にみれば,民事執行法は,1890年公布の民事訴訟法第6編〈強制執行〉編に規定の置かれていた上記(1)強制執行および(2)仮差押え,仮処分と,1898年公布の競売法で規定されていた(3)担保権実行としての競売および(4)形式競売とを単行法に統合し,昭和初年以来長年の手続法立法の懸案であった強制執行法改正問題に一応のピリオドを打ったものである。

 4種類の民事執行について簡単に説明する。(1)強制執行は,担保権のついていない私法上の通常の権利(たとえば,貸した金を返せ,損害賠償を払え,家屋を明け渡せなど)につき,その権利の存在を公証する債務名義に基づき,これを強制的に実現することであり,金銭債権の満足を目的とする金銭執行と,その他の権利の実現をめざす非金銭執行に分かれる。(2)仮差押え,仮処分の執行とは,仮差押え,仮処分の命令段階(民事保全法2条1項,9~25条)に対して,命令の実行段階をさす。(3)担保権実行としての競売とは,金銭債権の履行確保のために担保権(抵当権,質権,先取特権留置権)を有する者が,担保権の存在を証する文書に基づいて目的物を国家の手で売却し,債権の満足を図ることである。(4)形式競売とは,民法・商法その他の法律によって,共有物(民法258条2項),弁済の目的物(同497条),遺産(民法932条,家事審判法15条の4),商品(商法524条,527条),運送品(同585条,757条),端株(商法217条1項,2項,4項,会社更生法254条)等を金銭に換える必要がある場合の換価をさす(自助売却ともいう)。

 民事執行を行う機関執行機関)は,裁判所執行官である。裁判所は,主として不動産や債権を対象とする民事執行を担当し,執行官は主として動産を対象とする民事執行を担当するとともに,裁判所が主体として行う民事執行を補助する。

 民事執行は,このように権利の実現のための制度である点で,刑罰を実行する刑事執行と区別され,さらに,同じく権利の実現であっても私法上の権利の実現を目的とする点で,公法上の権利の強制的実現のための制度(租税徴収のための滞納処分土地収用等のための行政代執行(〈代執行〉の項参照))と異なる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「民事執行法」の意味・わかりやすい解説

民事執行法
みんじしっこうほう

民事執行に関する法規のことをいうが、これには形式的意義と実質的意義に用いられる場合とがある。前者においては、成文法としての民事執行法典をさし、後者においては、民事執行法のほかに裁判所法、執行官法、民事訴訟費用等に関する法律などの法律や民事執行規則なども含まれる。

 形式的意義の民事執行法は、1979年、昭和54年法律第4号として制定、翌年10月より施行された。同法は制定当初、民事執行として「強制執行」「仮差押え及び仮処分の執行」「担保権の実行としての競売」「留置権による競売及び民法、商法その他の法律の規定による換価のための競売」(同法1条)の4種のものを定めていた。民事執行法施行以前は、強制執行については旧民事訴訟法第6編強制執行の規定が、抵当権などの担保権の実行については競売法の規定が、それぞれ別個に定められていたが、民事執行法は、この旧民事訴訟法第6編と旧競売法を統合し、民事執行の手続を合理化、近代化して、その機能の充実と強化を図ることを目的として制定されたものである。その後、1989年に、民事保全法(平成1年法律第91号)が制定され、当初民事執行法に規定されていた仮差押えおよび仮処分に係る手続がこれに移行され、また、2003年に民事執行法には新たに第4章として財産開示手続が追加され、今日に至っている。

 現在の民事執行法は207か条からなり、第1章「総則」、第2章「強制執行」、第3章「担保権の実行としての競売等」、第4章「財産開示手続」、第5章「罰則」に分かれている。とくに第2章は、第1節「総則」、第2節「金銭の支払を目的とする債権についての強制執行」、第3節「金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行」、に細分化されているが、第2節では、2004年、第4款「債権及びその他の財産権に対する強制執行」に「少額訴訟債権執行」の手続(167条の2以下)の規定が付け加えられ、また第5款として「扶養義務者等に係る金銭債権の強制執行の特例」(167条の15以下)が設けられた。

[内田武吉・加藤哲夫]

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百科事典マイペディア 「民事執行法」の意味・わかりやすい解説

民事執行法【みんじしっこうほう】

民事訴訟法の強制執行競売の規定を統合した法律(1979年公布,1980年施行)。制定の目的は,1.執行手続の迅速化,2.債権者の権利の確実な実現,3.買受人の地位の安定・強化,4.債務者保護など。なお,本法にあった仮差押え・仮処分の規定は1989年に民事保全法として独立した。
→関連項目供託債権質動産民事訴訟

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「民事執行法」の意味・わかりやすい解説

民事執行法
みんじしっこうほう

形式的意義では昭和 54年法律4号をさす。民事訴訟法と競売法の両者を統合した民事執行手続の基本となる。旧制度を種々の点で改正しているが,その主眼は,債務者その他の利害関係人の利害を調整しつつ,執行手続きの改善および執行手続きの適正迅速化をはかろうとする点にある。 1980年 10月1日より施行。実質的意義における民事執行法に属するものとしては,執行官法 (昭和 41年法律 111号) ,執行官手続規則,自動車及び建設機械強制執行規則,電話加入権強制執行規則などがある。

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世界大百科事典(旧版)内の民事執行法の言及

【強制執行】より

…このような欠点または危険を避けるため,国家は,法律によって強制執行手続を定め,請求権の強制的実現は,もっぱらこれによらせることにした。 強制執行手続を定める現行法は,民事執行法である。民事執行法ができる以前は,旧民事訴訟法典中の第6編が,強制執行手続にあてられていた。…

※「民事執行法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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