塑性加工潤滑(読み)そせいかこうじゅんかつ(英語表記)lubrication in plastic working

改訂新版 世界大百科事典 「塑性加工潤滑」の意味・わかりやすい解説

塑性加工潤滑 (そせいかこうじゅんかつ)
lubrication in plastic working

塑性加工を行う際に,工具と材料の摩擦部分の摩擦力を減少させること。塑性加工は,材料に固体工具を介して力を及ぼし変形させて行うものであるから,工具と材料との間には圧力と摩擦力とが作用する。摩擦力は圧延を除いてほとんどの場合,ないほうが好ましいものである。圧延の場合でも,ロールが材料をかみ込むために十分な摩擦力さえあればそれ以上の摩擦力は有害であるので,ある程度の潤滑を行うことが必要である。摩擦が存在すると,加工力が余分に必要となり加工動力が大きくなること,材料の内部の変形に乱れが生じて製品の材質の不均質や内部割れの発生などの問題が生ずるおそれがあること,工具表面が摩滅するなど工具の損耗が大きくなって工具原単位が大きくなること,などの不都合がある。塑性加工における摩擦の原因も,他の場合と同じく基本的には物質どうしの凝集力である。とくに金属の場合,酸化皮膜や吸着ガス層などを介さずに直接金属面どうしが接触すると溶接したのと同等程度の力で結合してしまう。普通は気体分子を吸着して薄い酸化物層におおわれているので,このようなことはめったに起こらないが,塑性変形が生ずるときに表面の酸化物層がこわれて金属どうしの接触が起こるおそれがあるので,潤滑剤を工具と材料との間に介在させてこのような危険を極力なくすのである。

 潤滑剤には,工具と材料との間に数万気圧というかなりの高圧が作用している状態で相対的にすべり運動していても,両者の間に介在して直接接触することを防ぐ能力が要求される。また酸化物層が破壊された跡へすぐに吸着されてその代理を務めるような性質も要求される。このために,天然の油脂鉱油に脂肪酸やリン酸エステルを配合したもの,合成エステルなどの液体潤滑剤,金属表面にリン酸塩皮膜を形成させた後に金属セッケンを被覆する方法,黒鉛や二硫化モリブデンのようなせん(剪)断破壊しやすい性質を利用した固体潤滑剤高温で利用される溶融ガラスや溶融金属塩などが,その用途の特徴に従い選択されて利用されている。
鍛造
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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