塩化カドミウム(読み)えんかカドミウム(その他表記)cadmium chloride

改訂新版 世界大百科事典 「塩化カドミウム」の意味・わかりやすい解説

塩化カドミウム (えんかカドミウム)
cadmium chloride

化学式CdCl2。融点568℃,沸点960℃,比重4.047(25℃),水に対する溶解度140g/100g H2O(20℃)。金属カドミウムに450℃で塩化水素ガスを反応させてつくる。また水和塩化カドミウムCdCl2・2.5H2Oを塩化チオニルと還流すると無水物が得られる。メチルアルコールエチルアルコールにはやや溶け,アセトンエーテルには難溶。塩酸溶液中ではCd2⁺は存在せず,ほとんどCdCl⁺,CdCl2の形で存在する。CdCl3⁻,CdCl42⁻の割合は少ない。結晶構造は,塩素が立方最密パッキングに重なり,その層の一つおきにカドミウムが入り,カドミウムには塩素が6配位している。この層構造を図aに示す。図bはこの層を横から見た図である。塩素原子が隣り合った層との間の結合力が弱いので,この方向に著しいへき開現象を示す。MX2型化合物(Mは2価金属,Xは塩素,臭素,ヨウ素)にはこの構造をとるものが多く,総称して塩化カドミウム型構造という。MCl2(MはMg,Mn,Fe,Co,Ni,Zn),NiBr2,ZnBr2,NiI2,ZnI2などがこの例である。
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化学辞典 第2版 「塩化カドミウム」の解説

塩化カドミウム
エンカカドミウム
cadmium chloride

CdCl2(183.32).硝酸カドミウムに濃塩酸を作用させ,濃縮冷却すると得られる.再結晶によって精製すると白色の2.5水和物が得られる.このものは34 ℃ で一水和物,130 ℃ で無水物となる.無水物は無色透明の葉片状晶.六方晶系.塩化カドミウム型構造.密度4.05 g cm-3.融点568 ℃,沸点960 ℃.水に易溶,エタノール,メタノールに可溶.水溶液であまり電離せずCdCl2として存在するほか,電離しても自己錯化してCd[CdCl4]のような錯体として存在する.写真,染色めっき触媒顔料の原料,分析試薬(硫化物の沈殿剤),塩化ビニル安定剤などに用いられる.有毒,密栓貯蔵.[CAS 10108-64-2:CdCl2][CAS 7790-78-6:CdCl2・2.5H2O]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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