化学辞典 第2版 「塩化スルフィニル」の解説
塩化スルフィニル
エンカスルフィニル
sulfinyl chloride
SOCl2(118.97).IUPAC命名法で許される慣用名は二塩化チオニル.付加方式体系名はジクロリドオキシド硫黄.S2Cl2またはSCl2とSO3との反応や,PCl5とSO2との反応などで合成される.室温では,無色,発煙性の刺激臭のある液体.密度1.66 g cm-3(20 ℃).気体分子はSを頂点とする三方すい型で,S-O1.48 Å,S-Cl2.07 Å.∠Cl-S-O108.0°,∠Cl-S-Cl97.0°.融点-105 ℃,沸点78.8 ℃.140 ℃ 以上で分解してS2Cl2,SO2,Cl2 になる.水とははげしく反応してSO2とHClになる.ベンゼン,クロロホルムなどに可溶.有機合成で,酸化剤や塩素化剤として使われる.たとえば,-OHや-SH基を-Cl基にかえて塩化アシルをつくったり,グリニャール試薬をスルホキシドにかえる作用をする.皮膚,粘膜などをおかす.「塩化チオニル及びこれを含有する製剤」は毒物及び劇物取締法・劇物,「塩化チオニル」は労働安全衛生法・名称等を通知すべき危険物及び有害物,化学兵器禁止法・第2種指定物質-原料物質である.[CAS 7719-09-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報