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外国判決 がいこくはんけつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

外国判決
がいこくはんけつ

外国の裁判所による判決。国家主権が相互に独立であるという現在の国際関係を前提とするかぎり,外国でくだされた有効な判決が内国においてもただちに有効な判決とはならない。しかし,そのまま放置しておくと,外国で有効な判決がくだされても,同一の事件について再び内国で,当事者は訴訟を裁判所も外国の裁判所ですでになされたのと同様の審理を繰り返さねばならず,当事者と裁判所の双方にとってきわめて不便な二重の手間がかかる。のみならず,場合によっては内外の判決の間に相違や矛盾が生まれることもある。このような事態を避けるため,各国は外国の判決に対しても一定の条件と手続によって「判決」としての効力を認めようとする。これを外国判決の内国における承認という。日本の場合は民事訴訟法で,次の条件が満たされれば外国の判決であっても日本で自動的に承認される,と規定されている。 (1) 確定した判決であること,(2) 法令または条約で外国裁判所の国際的管轄権を否認していないこと (承認されるための管轄の要件という) ,(3) 敗訴の被告が日本人の場合,公示送達以外の方法で訴訟の開始に必要な呼び出し,もしくは出頭命令の送達を受けているか,または応訴していること,(4) その判決が日本の公序良俗に反しないこと,(5) その判決をくだした国との間で相互に判決を承認し合う保障のあることである。ただし承認された外国判決に基づいて日本で強制執行をしようとするときは,まず執行判決を日本の裁判所に請求せねばならず,そのための訴えを起こさねばならない。

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世界大百科事典 第2版の解説

がいこくはんけつ【外国判決】

外国でなされた判決であるが,これが国内で一切無視されるとすると,その外国との間で同一の法律関係につき矛盾する取扱いがなされ得ることになり,法的安定性が著しくそこなわれる。そこで外国判決の承認および執行という制度が各国で認められてきている。日本でも,民事訴訟法118条は,民事に関する外国判決であってその国において確定したものが,いかなる場合に日本において承認されて効力を認められるかを定める。同条は承認要件として,(1)その外国が日本から見て国際裁判管轄(裁判管轄)を有すること(1号),(2)敗訴の日本人被告がその外国において十分な手続的保障を受けたこと(2号),(3)その外国判決を承認することが日本の公序良俗に反しないこと(3号),(4)その外国が日本と同等の条件で日本の判決を承認してくれるという意味での〈相互の保証〉があること(4号)を列挙しており,このすべてを満たす外国確定判決のみが日本で承認される。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

外国判決
がいこくはんけつ
foreign judgment

外国裁判所の判決。

概説

国際法上、国家主権は相互に独立しているので、たとえば、A国の裁判所の判決の効力をB国がB国領域内で認め、また強制的にその内容を実現すべく強制執行する義務はない。しかし、だからといって、相互に外国判決の効力をまったく認めないこととすると、国境を越えて営まれている人や企業の活動の実態からみて不適当である。とくに私人の権利義務や法律関係にかかわる民事判決については、国境を越えれば判決の効力はいっさい及ばないとすれば、たとえば、A国で支払義務がある者がB国に財産をもっていても手出しができず、また、A国で離婚判決を得ているのにB国では夫婦のままであって再婚ができないといった不都合が生ずる。そこで、外国民事判決と外国刑事判決とに分け、外国民事判決については、国際的な法秩序の構築・維持の観点から、あるいは他国の国家行為に一定の敬意を払うという国際礼譲international comityに基づき、判決の効力を受け入れる国の側で一定の要件を設けて、それを具備することを条件に外国判決に一定の効力を認める例が一般的である。これに対し、外国刑事判決については、それが刑罰というきわめて公権力性の強いものであり、各国の公益に深く根ざしたものであるため、原則として外国の判決に基づいて刑の執行をするということはない。しかし、民事判決についても、相互に条約に基づく約束をしていない限り、外国判決の効力はいっさい認めない国(中国など)もある。既述のように、もともと外国判決の効力を承認・執行しなければならないという国際法上の義務はないので、これらの国の措置が国際法違反となるわけではない。他方、外国刑事判決についても、外国から逃亡してきた犯罪人については、一定の範囲で、犯罪人の引渡しを行っている(逃亡犯罪人引渡法)。
 外国民事判決の承認・執行については、ヨーロッパ各国の間では18世紀ごろから2国間条約による取決めをしていた。そして、EC(ヨーロッパ共同体)の設立条約において、域内での判決の相互承認・執行を図る取決めの作業をすべきことが規定されたため、1968年に「民事及び商事に関する裁判管轄及び判決の執行に関する条約」(ブリュッセル条約とよばれる)が作成され、これがECの加盟国拡大に伴って改正され、さらに、2002年からは原則としてEU(ヨーロッパ連合)加盟国の間では規則の形で施行されている。また、EU加盟国はスイス、アイスランド、フィンランドの3か国との間でもほぼ同様の内容の規定を適用することを定めたルガノ条約とよばれる条約を締結しており、実質的に、ヨーロッパの主要国の間では国際裁判管轄と外国判決の承認・執行の基準がその相互関係については統一されている。また、中南米諸国の間にも、ラ・パス条約とよばれる枠組みが存在する。これらの地域条約に対し、アメリカや日本を含む世界全体をカバーする条約はまだ存在しない。そこで、19世紀の末から国際私法の統一を任務とする活動をしてきた国際機関であるハーグ国際私法会議は1996年から国際裁判管轄ルールの規律も含む世界的な条約の作成作業を進めたが、アメリカと他の国々の国際裁判管轄ルールの違いが大きく、2005年に管轄合意条約を作成しただけでこのプロジェクトは終了した。しかし、その後、外国判決の承認・執行だけに対象を絞った世界的な条約作成プロジェクトが再開されている。[道垣内正人]

日本における外国民事判決の扱い

日本における外国裁判所の民事判決の扱いについては、民事訴訟法第118条においてその効力の日本での承認について規定され、民事執行法第24条においては強制執行について規定されている。後者は前者の定める要件をそのまま引用して規定しているので、両者とも要件は同じである。すなわち、外国裁判所の確定判決であること(民事訴訟法118条柱書)、判決を下した外国裁判所が日本からみて国際裁判管轄を有すること(間接的一般管轄の要件、同法118条1号)、敗訴の被告が公示送達等によらないで訴訟の開始に必要な呼出し・命令の送達を受けたこと、または応訴したこと(同法118条2号)、判決の内容・訴訟手続が日本の公序に反しないこと(同法118条3号)、および相互の保証があること(同法118条4号)、という要件である。裁判の当否は審査されない(本案再審査の禁止、民事執行法24条2項)。要件を具備している外国判決は特別の手続を経ることなく日本での効力を認められる(自動承認制度)。承認される効力は判決国法上のそれであるが、人的・物的範囲が日本からみて広すぎる場合には部分的な承認にとどめられる。執行力は日本での執行判決請求訴訟により付与される。なお、離婚判決のような形成判決についてはそれが実体法上の法律関係を形成するものであるため、日本で適用されるべき準拠法が適用されているか否かを審査すべきであるとの見解もあるが、前記の民事訴訟法第118条の要件をそのまま適用するのが最近の判例であり、また、多数説もこれを支持している。
 具体的に争われた事例として、たとえば、アメリカのカリフォルニア州の裁判所が現地子会社の親会社にあたる日本企業に懲罰的損害賠償の支払いを命ずる判決を下し、その日本での執行が求められた事例において、最高裁判所平成9年7月11日判決(民集51巻6号2573頁)は、そのような見せしめのための制裁的な判決を執行することは日本の公序に反すると判断し、その執行を認めないとした。これについては、そもそも民事判決に該当しないとの理由で同じ結論を導くべきであるとの見解もある。また、ワシントンDCの判決の日本での執行が求められた事案において、最高裁判所昭和58年6月7日判決(民集37巻5号611頁)は、日本と重要な点で異ならない条件の下に日本の判決の効力を認めている場合には相互の保証があるものと扱うと判断し、その判決の執行を認めた。これは、日本における外国判決承認・執行要件と同じかそれよりも緩やかな条件で日本判決を認めるのでなければ、相互の保証の要件の具備は認めないとしていた大審院の判決を変更したものである。[道垣内正人]

日本における外国刑事判決の扱い

刑法は、一定の犯罪については、国外犯の処罰を定めている。その結果、外国で行われた行為については、その外国の刑法違反となると同時に、日本の刑法にも違反するということがある。たとえば、殺人罪については、犯人が日本人であれば、外国で殺人が行われても、日本の刑法第199条の適用対象とされる。その行為は、その行為のなされた国の刑法違反ともなるため、一つの行為について二つの国の法律に反するということになる。そこで、ある行為について外国で処罰された後、日本でふたたび処罰することができるかが問題となる。一般に、刑罰をもって保護されている法益はその法律を制定している国のものであるので、外国で刑事判決を受けて処罰されたからといって、日本の法益が回復されるわけではない。そのため、刑法第5条によれば、外国において確定判決を受けた者に対しても同一の行為が日本法上も犯罪となるのであればさらに処罰をしてよいとされている。ただし、外国で刑の全部または一部の執行を受けたときは、日本での刑の執行は軽減または免除される。
 なお、既述の外国民事判決のように、外国刑事判決を日本で執行することはない。そもそも刑事裁判は被告人の出廷が要件とされているのが通常であるので、外国で執行しなければならない状況になることはあまりないが、仮にそのような状況になったとしても、犯罪人引渡しという形で対処される。[道垣内正人]
『高桑昭・道垣内正人編『新・裁判実務大系3 国際民事訴訟法(財産法関係)』(2002・青林書院) ▽本間靖規他著『国際民事手続法』第2版(2012・有斐閣) ▽澤木敬郎・道垣内正人著『国際私法入門』第7版(2012・有斐閣)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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