塩化チオニル(読み)えんかチオニル(その他表記)thionyl chloride

改訂新版 世界大百科事典 「塩化チオニル」の意味・わかりやすい解説

塩化チオニル (えんかチオニル)
thionyl chloride

塩化スルフィニルsulfinyl chlorideの慣用名。化学式SOCl2。二酸化硫黄SO2と五塩化リンPCl5を直接反応させ,副生成物の塩化ホスホリルPOCl3沸点105.1℃)を蒸留(77~79℃)によって分離して得られる。

 SO2+PCl5─→SOCl2+POCl3

三酸化硫黄に二塩化硫黄を作用させても得られる。

 SO3+SCl2─→SOCl2+SO2

無色で,発煙性,刺激臭をもつ液体。融点-104.5℃,沸点78.8℃,比重1.638(20℃)。水により加水分解して二酸化硫黄と塩酸になる。ベンゼンクロロホルム,四塩化炭素とは混合する。有機化学においてアルコールの-OHを-Clに置き換える反応の試薬として重要である。

この反応は上に示すように4員環状の中間体を経て進むため,立体配置は保持される。カルボキシル基を酸塩化物に変える試薬としても用いられる。


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩化チオニル」の意味・わかりやすい解説

塩化チオニル
えんかチオニル
thionyl chloride

化学式 SOCl2 。塩化スルフォニル,チオニルクロリドともいう。無色,発煙性で刺激臭のある液体。沸点 76℃。ベンゼン,クロロホルムなどの溶媒と混り合うが,水とは反応して SO2 と HCl を生じる。その液体や蒸気皮膚粘膜をおかす。有機合成で水酸基やメルカプト基を塩素原子で置換するのに用いられる。また,グリニャール試薬と反応させて,スルホン基を導入するのに使用される。

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化学辞典 第2版 「塩化チオニル」の解説

塩化チオニル
エンカチオニル
thionyl chloride

[同義異語]塩化スルフィニル

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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