エネルギー準位(読み)えねるぎーじゅんい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エネルギー準位」の意味・わかりやすい解説

エネルギー準位
えねるぎーじゅんい

微視的(ミクロ)な粒子や粒子系がもつことのできるエネルギーの値。その系に固有なとびとびの値(エネルギー固有値という)をとることが多く、その値に比例する高さの横線で図示するためにこの名がある。許される値がとびとびになるのは、ミクロ粒子のもつ波動性による。原子に束縛された電子の波などは一種定常波をつくるが、弦の振動の例でもわかるように、定常波の種類は番号づけができるので、定常波で表される粒子の運動状態(古典力学軌道に対応する)も番号づけの可能なとびとびのものに限定される。粒子の運動エネルギーは波長逆数の2乗に比例するので、いちばんエネルギーが低いのは節のない長波長の定常波で表される運動である。節面の数とともにエネルギーも増す。j番目の定常波で表される状態のエネルギーをEjのように記す。

 異なる運動状態でエネルギー固有値の等しいものがg個あるとき、そのエネルギー準位はg重に縮退または縮重(しゅくじゅう)しているという。粒子が1個なら波は普通三次元空間の波であるが、n個の粒子からできている系では、x1y1z1x2……ynzn座標軸とする抽象的な3n次元空間の定常波を考えなければならない。しかし、事情はまったく同じである。

[小出昭一郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エネルギー準位」の意味・わかりやすい解説

エネルギー準位
エネルギーじゅんい
energy level

量子力学において,原子,分子原子核などの安定状態がもちうるエネルギーの値,あるいはそのエネルギーをもつ状態自体をエネルギー準位という。エネルギーは任意の値をとることを許されず,不連続的なとびとびの値をもつ。普通,エネルギー準位は水平な線分で表わし,縦軸にエネルギーを対応させる図を描く。いちばん下が基底状態,それより上の状態は励起状態を表わす。エネルギー準位の差は,それら準位の間の遷移の際に放出される光の振動数から決定できる。図でいえば,aはライマン系列,bはバルマー系列,cはパッシェン系列,dはブラケット系列である。 (→水素原子のスペクトル )

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