大償神楽(読み)オオツグナイカグラ

デジタル大辞泉 「大償神楽」の意味・読み・例文・類語

おおつぐない‐かぐら〔おほつぐなひ‐〕【大償神楽】

早池峰大償神楽

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「大償神楽」の意味・わかりやすい解説

大償神楽 (おおつぐないかぐら)

東北地方に山伏伝承した神楽の一種。岩手県花巻市の旧大迫町内川目の大償集落に伝わり,8月1日の早池峰(はやちね)神社の祭礼などで演じられることが多い。近隣の山伏神楽と同様に権現様と呼ばれる獅子頭に神を勧請し,農閑期にそれを舞わして持場の村々を歩き,家ごとに火伏せ,悪魔払いなどの祈禱を行った。夜は宿所の一間を舞場とし,古い猿楽能から影響を受けたと思われる神楽能を数曲演じ,村人を楽しませた。大償神楽と兄弟関係にある岳(たけ)神楽が伝承されている早池峰山麓の岳集落には,文禄4年(1595)の銘がある権現様があり,伝承では1488年(長享2)に他所から伝授されたという。神楽曲として翁舞,三番叟をはじめ,直面(ひためん)の鳥舞,屋島,曾我,神舞の山神舞,竜天,天王舞,能風の構成をもつ年寿(ねんじゆ),鐘巻,機織,蕨折(わらびおり),橋架(はしかけ)など式舞20曲,式外20曲余を伝え,ほかに狂言十数曲が残る。完成以前の猿楽能の様式を残し,また山伏流の激しい習練によって洗練された舞ぶりは,芸術的にもすぐれたものとされ,1976年5月に早池峰神楽として岳神楽とともに国の重要無形民俗文化財に指定された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の大償神楽の言及

【山伏神楽】より

…その夜,民家のひと間を舞台に借り,後方に幕を張って数番から数十番の古風な能や激しい舞,狂言などを演じた。現在,岩手県の早池峰(はやちね)山麓の稗貫郡大迫町大償(おおつぐない)の大償神楽や岳(たけ)の岳神楽は国指定重要無形民俗文化財になっている。演目は権現をまわす権現舞に始まり,式舞として《露払》《鳥舞》《御神楽(みかぐら)》《翁》《三番叟》《松迎(まつむかえ)》など,女舞に《年寿(ねんじゆ)》《機織(はたおり)》《橋引》《鐘巻》《蕨折(わらびおり)》《塩汲》《木曾》など,番楽舞(武士舞)として《信夫(しのぶ)》《鈴木》《八島》《鞍馬天狗》など,神舞として《山の神》《岩戸開》《五穀》《水神》《注連切(しめきり)》《天降》《八幡》《尊揃(みことぞろえ)》など,曲芸風の舞として《盆舞》《杵舞》《三本劔》《折敷(おしき)舞》など総計100番近い曲を伝える。…

※「大償神楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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