改訂新版 世界大百科事典 「大商蛭子島」の意味・わかりやすい解説
大商蛭子島 (おおあきないひるがこじま)
歌舞伎狂言。時代物。4幕。初世桜田治助・増山金八らの作。1784年(天明4)11月江戸中村座の顔見世狂言として初演。配役は河津祐安・源頼朝を3世沢村宗十郎,股野景久・文覚・北条時政を5世市川団十郎,伊藤祐親・長尾為景・長田景宗を3世大谷広右衛門,鎌田正清娘清滝を初世中村里好,北条娘政子を初世山下万菊,伊藤娘辰姫を初世三枡徳次郎ほか。一番目(前3幕)に曾我兄弟の仇討物語の発端である河津祐安の落命までを,二番目(4幕目)に源頼朝の平家追討の挙兵までを主題材とした〈伊豆日記〉の世界を描いた作。一番目,序幕に大薩摩,二幕目に富本,さらに〈暫(しばらく)〉の趣向を配し,当時の江戸顔見世狂言の形式を完備。二番目の辰姫の嫉妬には後世に伝わるめりやすの《黒髪》が上演されている。1962年東京歌舞伎座で二番目1幕,69年国立劇場で一番目2幕と二番目が復活上演された。
→源平合戦物
執筆者:池上 文男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報