日本大百科全書(ニッポニカ) 「大気海洋相互作用」の意味・わかりやすい解説
大気海洋相互作用
たいきかいようそうごさよう
air-sea interaction
atmosphere-ocean interaction
ある現象で、大気が海洋に作用を及ぼし、同時に海洋も大気に作用を及ぼしているとき、二つの作用を一括して大気海洋相互作用という。小規模から地球規模までのさまざまな現象に関与する重要な作用である。例を二つだけあげる。
(1)風浪の発達段階で、海面直上の大気の圧力波動が海面に波動を起こし、この波動が新たな波動を大気中に生む。これが、海面に働いて海面波動の発達を促す。
(2)太平洋の赤道海域の海面水温は西部が東部よりも摂氏6~7℃も高い。赤道では赤道湧昇のため海面水温は下がるが、西部では下層の冷水が深い層にあるのに、東部では浅い層にあるので、東部では冷水が表層に湧き上がりやすく、水温低下の度合いが強い。西部では水温低下の度合いが弱い。東部の冷水が貿易風によって西に流れる間に太陽や大気に暖められ、もともと暖かい西部に流れこむ。西部の大気は下から暖められて上昇し、上空を東に進んで東部で下降する。西部は低気圧、東部は高気圧となり、大気下層では東から西に向かって風(貿易風)が吹く。この赤道大気の東西循環を、1920年代に初めて論じたウォーカーJ. Walkerの名にちなんでウォーカー循環という。貿易風が海水を東から西に運んで、西部の高温を維持している。エルニーニョ現象(El Niño event)では、東部と西部の間の水温差が小さくなるため、貿易風は弱まり、暖かい海水は東部に滞留し、それが、西部の低気圧、東部の高気圧の差を小さくし、弱い貿易風を保つことになる。
[高野健三]