貿易風(読み)ボウエキフウ

デジタル大辞泉 「貿易風」の意味・読み・例文・類語

ぼうえき‐ふう【貿易風】

緯度30度付近にある亜熱帯高気圧帯から赤道に向かって吹く、ほぼ定常的な偏東風北半球では北東の風、南半球では南東の風となり、海洋上で特に顕著。恒信風こうしんふう
[補説]名称は英語trade windの訳。原義は「通り道の風」で、帆船時代、常に同じ海路をとれるほど一方向から吹く風であることから名付けられたもの。
[類語]春一番春風しゅんぷう春風はるかぜ花嵐薫風風薫る緑風やませ涼風すずかぜ涼風りょうふう秋風野分き木枯らし空風寒風季節風モンスーン東風ひがしかぜ東風こち西風偏西風南風みなみかぜ南風はえ凱風北風朔風雨風波風風浪風雪風雨無風微風そよ風軟風強風突風烈風疾風はやて大風颶風暴風爆風ストーム台風ハリケーンサイクロン神風砂嵐つむじ風旋風竜巻トルネード追い風順風向かい風逆風横風朝風夕風夜風松風まつかぜ松風しょうふう山風山颪谷風川風浜風潮風海風陸風熱風温風冷風

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精選版 日本国語大辞典 「貿易風」の意味・読み・例文・類語

ぼうえき‐ふう【貿易風】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] trade wind の訳語 ) 中緯度高圧帯から、赤道低圧帯に向かって吹く大規模な東寄りの風。風向は地球の自転によって北半球では北東、南半球では南東となる。昔、貿易船がこの風を利用したところからの名称。恒風恒信風熱帯東風。〔博物新編訳解(1868‐70)〕

貿易風の語誌

明治初期には「定風」や「恒信風」が優勢だったが、その後、英学の興隆とともに「貿易風」が主流になる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貿易風」の意味・わかりやすい解説

貿易風
ぼうえきふう

熱帯に定常的に存在する偏東風。熱帯東風ともいう。地表面付近では亜熱帯高気圧から赤道低圧帯に向かって吹き込み、北半球では北東貿易風、南半球では南東貿易風となっており、とくに海洋上で顕著に卓越する。貿易風系は南北方向の鉛直面で、赤道近傍で上昇し亜熱帯高気圧圏内で下降する大規模な対流を形成しており、これを貿易風循環、またはこの循環の本質を明らかにしたイギリスのハドレーの名をとってハドレー循環という。貿易風の層は厚く8~10キロメートルまたはそれ以上に及ぶ。地表面近くの貿易風下層流(貿易風の呼び名を、この下層の風にだけ特定して用いることも多い)は比較的冷たく湿潤で、その上に高温乾燥の貿易風上層流が存在し、その境界の2~3キロメートルの高さに貿易風逆転とよばれる気温の逆転層がある。この構造はとくに亜熱帯高気圧の南東部で顕著である。貿易風の吹く海上で発生する積雲は、この逆転層に上限を抑えられ、ほぼ同じ大きさで比較的規則正しく群立して、独特の景観を形成する。これを貿易風積雲という。なお、貿易風という呼び名は、英語のtrade windの訳語であるが、tradeの原義は「通り道」であり、帆船時代に海上航路を可能にする、ほぼ一定の方向から吹く風の意味で、そのようによばれたものとされている。

[倉嶋 厚]

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改訂新版 世界大百科事典 「貿易風」の意味・わかりやすい解説

貿易風 (ぼうえきふう)
trade wind

緯度30°付近にある亜熱帯高圧帯から西向きの成分をもって赤道に向かって吹くほぼ定常的な風で熱帯東風とも呼ばれている。北半球では北東の風,南半球では南東の風となっている。緯度30°から5°くらいの低緯度地方の地表において観測されるが,とくに海洋上で卓越する。貿易風帯では一般に下降気流が卓越するため,2~3kmの高度に気温の逆転層が現れ,これより上では大気は乾燥している。この逆転は亜熱帯高気圧の南東部で顕著で,南西部は南東部ほどではない。貿易風と大陸上の気温の高い気団との間につくる前線を貿易風前線という。

 貿易風という名称は英語のtrade windの訳語であるが,tradeの本来の意味は〈道〉〈通り道〉であることから,繰り返し往復しよく知られている航路のことになり,転じて,このようなことが可能になるほど,一定の方向に吹く風のことをtradewindと呼ぶようになったものである。したがって貿易風よりは岡田武松によって一時用いられた〈恒信風〉の方が適当で,フランス語のalizéやドイツ語のPassatにも適合する。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貿易風」の意味・わかりやすい解説

貿易風
ぼうえきふう
trade wind

亜熱帯高圧帯から赤道低圧帯に向かって吹く対流圏下層の偏東風。北半球では北東貿易風,南半球では南東貿易風と呼ばれる定常的に吹く風である。古くは恒信風と呼ばれていた。両半球とも 5°~30°付近の海洋上で卓越している。この風の上層には反対貿易風が吹いており,ハドレー循環を形成して,地球の低緯度における熱や水蒸気量などを北へ運ぶ南北交換の役割を担っている。ほぼ定常的に吹くため帆船時代の貿易に利用されるなどしたが,近年の観測によると変動も大きく,エルニーニョ現象やラニーニャ現象の誘因にあげられている。

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百科事典マイペディア 「貿易風」の意味・わかりやすい解説

貿易風【ぼうえきふう】

熱帯東風,恒信風とも。熱帯〜亜熱帯の大洋上に存在する比較的定常な偏東風。北半球では北東寄り(北東貿易風),南半球では南東寄り(南東貿易風)。中緯度高圧帯から赤道低圧帯に吹き出す風で高さは8〜10kmに及ぶが,比較的冷たく高湿の下層部(貿易風地表流)と高温で乾燥した高層部からなり,両者の境は2〜3kmの高度で貿易風逆転と呼ばれる不連続面をなす。貿易風は大西洋,太平洋東部で顕著で一年中吹くが,太平洋西部,インド洋では季節風によって乱される。
→関連項目熱帯収束帯ハルマッタン

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世界大百科事典(旧版)内の貿易風の言及

【アゾレス高気圧】より

…年間を通じて明瞭に形成され,冬はその中心が少し南下する。この高気圧の南半分で吹く北東の風が大西洋の貿易風で,この気圧と風の系は広くメキシコ湾にまでのびている。【斎藤 直輔】。…

【北太平洋高気圧】より

…北太平洋東部の海面上に中心をもつ大高気圧で,大西洋上のアゾレス高気圧に対応する半永久的な高気圧。この高気圧の南側から赤道へ流れる北東の気流が,太平洋の貿易風である。冬季は中心が少し東に移り,平均して西経145゜,北緯30゜付近にあり,その一部がマリアナ諸島をおおっている。…

【ヒッパロスの風】より

…《エリュトラ海案内記》にはこの風の命名の由来が述べられている。のちには〈貿易風〉とも呼ばれるようになった。【重松 伸司】。…

【偏東風】より

…下層で赤道方向に向かう流れはコリオリの力により西向きの風を生じる。これが赤道偏東風で,別名貿易風とも呼ばれている。赤道偏東風は高さ8~10kmにも達し,その上の上層風は変動が大きい。…

【ポリネシア】より

…一般に雨は赤道の北側では6~10月に,南側では11~4月に多いが,季節的にも,地理的分布においても多様である。北半球ではハワイ諸島,南半球ではイースター島のある東太平洋上の亜熱帯高圧帯から赤道沿いの無風帯へ向けて吹き出す貿易風は,地球の自転により北半球では北東風,南半球では南東風となる。このため高い火山島の風上にあたる東斜面には雨が多く,風下は雨が少ない。…

※「貿易風」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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