改訂新版 世界大百科事典 「大氷河時代」の意味・わかりやすい解説
大氷河時代 (だいひょうがじだい)
great ice age
イギリスの地質学者ギーキーJames Geikie(1839-1915)は,1874年に出した著書のなかで第四紀更新世の氷河時代をさして〈大氷河時代〉とよんだ。当時,氷河作用は第四紀には1回の氷床を形成しただけである,という単一氷河作用説が支配的であった。それは,氷成堆積物が同じ時代のものであり,終堆石が氷床の中心にむかってしだいに新しくなるように配列されていることが多いので,氷床の小規模な前進(拡大)・後退(縮小)があったとしても,全体としては氷床が1回だけ拡大し,それがしだいに消滅していった,という主張である。それに対してギーキーは,氷河時代の天文学的な要因説についてクロールJ.Crollが1864年に公表した多氷河作用の存在を最初に支持した。それは,地軸の傾きの変化(歳差運動)の周期と地球軌道の形の変動で,どちらかの半球に寒冷化が生じるというもので,北半球では1回以上の氷期が間氷期をはさんで存在したことを述べたものである。ギーキーは,スコットランドにある2層以上の氷礫土層から多氷河作用を強調した。このような主張は,アルプス北麓のバイエルン高原におけるA.ペンクとE.ブリュックナーの研究で実証された。
執筆者:新堀 友行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報