朝日日本歴史人物事典 「大神基政」の解説
大神基政
生年:承暦3(1079)
平安時代後期の雅楽奏者。石清水八幡宮所属の楽人であったが,笛の才能を見込まれて,宮廷勤仕の地下楽家のひとつである大神家の祖,惟季の養子となる。家業は横笛。堀河,鳥羽両天皇の笛の師範。竜笛を戸部正清と惟季に,高麗笛を玉手公延に,神楽笛を堀河天皇に学び,雅楽に用いる3種すべての横笛の技術を習得した。その集大成として『大神家笛譜』を著したが,これは雅楽の国風化への移行期の様相を伝える貴重な笛譜である。元永1(1118)年に笛一の者となり,長じて長承1(1132)年当時としては破格の従五位下に叙される。翌年箏の上手として知られる娘夕霧のために『竜鳴抄』(『竜吟抄』とも)を著す。この書は小書ながら,鎌倉期の楽書『教訓抄』(1233)に先んじる貴重な楽書である。なお夕霧は,『建礼門院右京大夫集』の作者の母である。<参考文献>『楽所補任』
(蒲生美津子)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報