大衆の蜂起(読み)たいしゅうのほうき(英語表記)La rebelión de las masas スペイン語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「大衆の蜂起」の意味・わかりやすい解説

大衆の蜂起
たいしゅうのほうき
La rebelión de las masas スペイン語

スペインの思想家オルテガ・イ・ガセーの著書。1930年初版。彼は1920年代のヨーロッパ社会を、人々がその生命力と可能性を発揮するうえにおいて過去のどの時代よりも優れた時代、つまり大衆が社会的権力を完全に握った社会としてとらえ、他方では、現代は、自分に対して特別の要求をもたず、自己完成への努力を進んでしようとしない無責任で「慢心しきったお坊ちゃん」=大衆が充満している社会であるとして、そうした大衆社会化状況を「大衆の蜂起」と名づけている。こうした危機状況から脱出する方法としては、彼は、個人の「生」を中心に置く自由民主主義立場を再生し、狭小なナショナリズムによらないヨーロッパ大国民国家の形成を通じて、個人的自由を欠くボリシェビズムレーニン主義プロレタリアート独裁と暴力革命主義をとる)と暴力的ファシズムとは異なる第三の道を模索することを提案している。

田中 浩]

『桑名一博訳『大衆の反逆』(1975・白水社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android