天然に存在する炭酸ナトリウム(ソーダ)質の資源をいう。北アメリカ,アフリカ,旧ソ連南部,インド,中国などに産出する。降雨の少ない乾燥地帯で,ソーダ分を高濃度に含む鹹(かん)湖が蒸発して層状に生成している例が多い。日本には存在しない。ケニア,アメリカの天然ソーダのみは工業的に利用されている。鉱床はトロナtronaと称し,成分はNa2CO3・NaHCO3・2H2O(セスキ炭酸ナトリウム)である。採掘,焙焼,水溶解,再結晶などの精製工程を施して,炭酸ナトリウムを製造する。ケニアのマガディ湖はソーダ湖として有名で,1904年に発見され,トロナ埋蔵量2億tといわれた。古くから小規模の炭酸ナトリウム生産が行われている。製品の純度は合成品より低い。アメリカの天然ソーダはカリフォルニア州のオーエンズ湖とシアレス湖,ワイオミング州のグリーン・リバーに産する。とくにグリーン・リバー付近の埋蔵量は無尽蔵といわれ,かつ高純度で,有利なソーダ資源とされている。アメリカでは,炭酸ナトリウムの製造は,合成法から天然ソーダ法へとしだいに変換しつつある。
→炭酸ナトリウム
執筆者:金澤 孝文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…水溶液は加水分解して強いアルカリ性を示し,二酸化炭素を吸収して炭酸水素ナトリウムを生成する(CO2の吸収率は50℃で最大)。 Na2CO3+H2O⇄NaOH+NaHCO3 Na2CO3+CO2+H2O―→2NaHCO3【藤本 昌利】
[工業的製造法]
工業塩NaClの分解により製造する方法,苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)の炭酸化,天然ソーダの精製,の3方式がある。日本ではおもに工業塩から製造する方法によるが,必要に応じ苛性ソーダの炭酸化も行われている。…
※「天然ソーダ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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