改訂新版 世界大百科事典 「炭酸塩鉱物」の意味・わかりやすい解説
炭酸塩鉱物 (たんさんえんこうぶつ)
carbonate
炭酸陰イオン(CO3)2⁻と陽イオンとの結合によってできている鉱物。結晶構造中(CO3)2⁻が独立に存在するものが大部分を占めているが,なかでも方解石構造をとるもの,およびアラゴナイト構造をとるものが主である。また(CO3)2⁻以外のOH⁻,Cl⁻,F⁻などの陰イオンを含むものにクジャク石,ラン銅鉱などがあり,さらに少数例であるが,CO3と水素結合してできた(HCO3)⁻の鎖状構造をなすもの(ドウソン石など)や(CO3)2⁻とUO2が連結して層状構造をなすもの(ラザフォード石など)などがある。
方解石系には,CaCO3,MgCO3,FeCO3,MnCO3,CoCO3,ZnCO3,CdCO3などの組成の鉱物が知られている。結晶構造中での(CO3)2⁻は,炭素原子Cを中心に3個の酸素原子Oが囲んだ正三角形をなしている。いずれも三方晶系に属し,その構造はちょうどNaCl構造を3回軸の方向に圧縮したようになっており,Naの代りに2価の陽イオンが,Clの代りに(CO3)2⁻が位置している。アラゴナイトは斜方晶系に属し,方解石と同じCaCO3でありながら構造は異なり,多形の関係にある。また方解石系やアラゴナイト系の鉱物は,化学組成が類似していて結晶構造がきわめて類似している。これらの鉱物は同形であるといわれる。構造における方解石型とアラゴナイト型との違いは,陽イオンの大きさ,すなわちSr,Ba,Pbなどのように大きな陽イオンよりなるものはアラゴナイト型構造を,Fe,Mn,Mg,Znなどのようにイオン半径1Å以下の場合には方解石型をとる。イオン半径が1.0Åに近いCaの場合には両方の構造型がある。ドロマイトはCaとMgの2種の陽イオンを含むために方解石型よりも対称が低くなっている。多くの炭酸塩鉱物ではCO3の分極によって強い複屈折を示す。とくに方解石の複屈折が著しい。炭酸塩鉱物はたいてい希酸に溶けて二酸化炭素CO2を出す。
執筆者:柿谷 悟
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報