日本大百科全書(ニッポニカ) 「太陽熱利用設備」の意味・わかりやすい解説
太陽熱利用設備
たいようねつりようせつび
太陽からの放射熱を大規模な発電から住宅用の温水器に至るまでいろいろな方法で利用するための設備で、集熱、熱伝搬、蓄熱、熱交換、エネルギー交換、放熱などの各システムから成り立つ( )。
[松浦邦男]
集熱システム
集光式と非集光式に分類される。集光式はレンズや反射鏡を用いて点または線上に集中させるシステムで、太陽に向けて自動的に追尾させ、150℃以上の高温の熱を得る場合に用いる( )。非集光式には平板型と真空ガラス管型とがある。平板型は、水または空気を通すパイプのついた黒色(選択吸収膜)金属板を、空気層を設けて強化ガラスで覆い、下側に断熱材を貼(は)ったものである。真空ガラス管型は、その中に黒色金属板のひれ付き集熱管を入れている( )。
[松浦邦男]
蓄熱システム
太陽放射は天候により不安定であるので、集めた熱は蓄熱して安定な状態で利用することが多い。水式集熱では十分保温した水槽に蓄え、空気式は砕石など熱容量の大きい固体を詰めた槽を用いる。別に潜熱蓄熱といって芒硝(ぼうしょう)(硫酸ナトリウム)などに蓄熱させて液体とし、固化する際の放熱を利用することもあるが実用的でない。
[松浦邦男]
熱利用システム
集めた熱によって蒸気をつくりタービンを駆動させるのが通常の太陽熱発電である。高温の熱が必要なので集光式集熱システムを使用する。現在のところ日照条件のよい砂漠のような地域でないと実用化は困難である。そのほか太陽熱による蒸留・淡水化、工業用加熱、農業用温室、畜舎などの利用設備もあるが、もっとも一般的なものは住宅・学校など一般建物の給湯・暖房設備である。
[松浦邦男]
太陽熱温水器
簡便で住宅用としてもっとも普及しており(循環式は集熱部と断熱材で保温された貯湯部を分離し、比重差を利用して循環、貯湯する方式で、夕方の湯温の低下はかなり防げる。
)、汲置(くみおき)式は集熱部と貯湯部とが一体構造で安価であるが、夕方からあとは冷えやすい。[松浦邦男]
太陽熱給湯・暖冷房システム
集熱器で集めた熱を蓄熱槽に入れ、熱交換器を経て台所、浴室などへ給湯する。暖房としては、熱交換器からの温水を放熱器や床に埋め込んだパイプに通し室内に放熱する。冷房は高温水を熱源とする吸収冷凍機によるが、住宅のように小規模冷房では設備費が高く経済的でない。
[松浦邦男]
『『太陽エネルギー利用ハンドブック』(1985・日本太陽エネルギー学会)』