硫酸ナトリウム(読み)りゅうさんなとりうむ(英語表記)sodium sulfate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸ナトリウム
りゅうさんなとりうむ
sodium sulfate

ナトリウム硫酸塩。天然にはテナール石として無水和物式量142.2)の形で産出する。十水和物はボウ硝グラウバー塩(ドイツのグラウバーが「奇跡塩」と称して医療に用いた)とよばれ、炭酸ナトリウムや水酸化ナトリウムを硫酸で中和した水溶液から、32.48℃以下で晶出する。工業的にはビスコースレーヨン製造の副産物として大量に製造される。

 無色結晶で、乾燥空気中では徐々に風解する。加熱すると32.38℃で結晶水に溶けて融解し、100℃で無水和物となる。水によく溶け、アルコールには不溶。無水和物(斜方晶系比重2.698)は徐々に水分を吸収して十水和物に戻る。過飽和溶液をつくりやすく、これを5℃以下に冷却するか、アルコールを加えると、準安定な七水和物の無色の結晶(正方晶系)が得られる。無水和物はガラスや硫化ナトリウムの製造原料、また乾燥剤として用いられる。十水和物は冷却剤や医薬品(下剤)として用いられる。

[鳥居泰男]


硫酸ナトリウム(データノート)
りゅうさんなとりうむでーたのーと

硫酸ナトリウム
硫酸ナトリウム十水和物
  Na2SO4・10H2O
 式量  322.2
 融点  32.4℃
 沸点  ―
 比重  1.464(測定温度16℃)
 結晶系 単斜
 屈折率 (n) 1.396
 溶解度 36g/100g(水15℃)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫酸ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫酸ナトリウム
りゅうさんナトリウム
sodium sulfate

化学式 Na2SO4 。古くは硝酸製造での副産物である硫酸水素ナトリウム食塩を加熱して製造したが,現在では濃硫酸と食塩を強熱して製造する。また北アメリカ西部などで天然物として産出する。無水物は無色の固体で,水によく溶ける。比重 2.70,融点 884℃。室温で結晶させると 10水塩として晶出する。無色単斜晶系結晶,比重 1.46。これをグラウバー塩または芒硝ともいう。加熱すると 32.4℃で結晶水に溶ける。ガラス原料,クラフト紙や合成洗剤の製造,染色および紡績など工業上広く用いられる。

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