国指定史跡ガイド 「奈良山瓦窯跡」の解説
ならやまかわらがまあと【奈良山瓦窯跡】
奈良県奈良市と京都府木津川市にある瓦窯跡。指定名称は「奈良山瓦窯跡 歌姫瓦窯跡(うたひめかわらがまあと) 音如ヶ谷瓦窯跡(おんじょがだにかわらがまあと) 市坂瓦窯跡(いちさかかわらがまあと) 梅谷瓦窯跡(うめだにかわらがまあと) 鹿背山瓦窯跡(かせやまかわらがまあと)」。平城京の後背にあたる北方には、標高90~100mのなだらかな丘陵が続き、奈良山丘陵と呼ばれており、丘陵には平城宮の宮殿や寺院の瓦を焼いた瓦窯跡群が数ヵ所に点在する。歌姫瓦窯跡は、それらのうちの一つであり、奈良市歌姫町の鹿川に面した西側丘陵の東向き斜面に設けられ、1976年(昭和51)に国の史跡に指定された。歌姫瓦窯跡は、南北に連なる半地下式の6基の平窯の存在が確認され、南端の1基は保存状態がよく、全長4.2m、平瓦を用いて側室をつくり、6本の分焔柱を備えた構造になっている。4基の窯跡と数棟の掘立柱建物が発見された音如ヶ谷瓦窯跡は、木津川市相楽台にあり、法華寺の創建瓦を焼いた。同市州見台の市坂瓦窯跡からは、9間×4間の掘立柱建物4棟と8基の窯、興福寺の創建瓦と同じものを焼いた梅谷瓦窯跡は、同市梅谷台にあり、7基の窯が確認された。同市鹿背山の鹿背山瓦窯跡では粘土採掘場や運搬に使われた「もっこ」の一部などが、2基の窯跡とともに発掘された。2010年(平成22)、木津川市にあるの4つの瓦窯跡と歌姫瓦窯跡とをあわせて名称変更され、「奈良山瓦窯跡」として国の史跡に指定された。歌姫瓦窯跡へは、JR関西本線平城山駅から徒歩約10分。