奉公人市(読み)ほうこうにんいち

改訂新版 世界大百科事典 「奉公人市」の意味・わかりやすい解説

奉公人市 (ほうこうにんいち)

人市ともいい季節奉公人の雇用を仲介するための市。この市の起源は,季節奉公人の出現と出稼ぎ慣行の盛行を背景としておりそう古いものではない。近世初中期以降,奉公人の周旋をする口入(くちいれ)屋が大都市のように業として成立しない地方都市に多く生まれた。文献の上では元禄(1688-1704)ころまで続いた加賀金沢の女市・辻人市が有名であるが,秋田県横手,山形県長井,山口県豊浦郡滝部,福岡県宗像郡田島では昭和初期まで開かれていた。奉公人の出替りのころ祭礼など人の出の多い日に催され,本人同士の直接取引で労働契約がなされる。横手の若勢市(わかぜまち)/(わかぜいち)は近在の農家が山村の若者を農繁期に雇入れするもので,若者は自作のわらじや草履などを並べて腕前を示し,雇主は意にかなった者をこの日掛店される蕎麦屋や茶屋に誘って契約酒を飲ませすぐ連れ帰った。長井の市は養蚕期の人手を,滝部や田島の市は田植・刈入れ時の労力を漁村の女に求めたものであり,また金沢の市は奥能登漁村の女が冬の閑期に町方で出稼ぎするための市であった。なお大都市でも,天保(1830-44)以降廃れた江戸日本橋三河万歳才蔵市のように,特殊なもので口入屋が介入するまでもない場合は市によった例もある。
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