周旋(読み)しゅうせん

精選版 日本国語大辞典 「周旋」の意味・読み・例文・類語

しゅう‐せん シウ‥【周旋】

〘名〙
① (━する) 人の前などである動作をすること。また、なにげない日常の動作。たちいふるまい。
※本朝文粋(1060頃)一二・詰眼文〈三善清行〉「昔与卿同胞而生育。今与卿合体而行蔵。相共周旋。漸六十余歳」 〔孟子‐尽心・下〕
② (━する) ことをとり行なうために動きまわること。奔走して処理すること。
※菅家文草(900頃)九・請罷蔵人頭状「列侍中以周旋」 〔春秋左伝‐僖公二三年〕
③ (━する) あちこちをめぐりあるくこと。周遊
※本朝無題詩(1162‐64頃)一〇・秋日遊雲林院〈藤原明衡〉「洞裏幽奇今古伝、被佳客周旋
古今著聞集(1254)六「管絃のおこり、そのつたはれる事ひさし。始終四時にかたどり、周旋風雨にかたどる」 〔史記‐蒙恬伝〕
④ (━する) 世話をすること。とりもちをすること。面倒をみること。斡旋
※重刊改修捷解新語(1781)八「こんどは御しうせんおもって、かれこれしゅびよくあいすめまして」
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉八「周旋して仙巴多羅買(センバーソロミュー)の病院に入しめ」 〔春秋左伝‐文公一八年〕
国際紛争の平和的処理方法の一つ。国際法で、第三国紛争当事国交渉をとりもって、外部から援助すること。
西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉二「普魯士王も魯帝の周旋を以て旧地の半を得たり」
安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「其代り周旋(シウセン)が欲蔵だから一わりの分じゃア承知しめへが」

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デジタル大辞泉 「周旋」の意味・読み・例文・類語

しゅう‐せん〔シウ‐〕【周旋】

[名](スル)
売買・交渉などで、当事者間に立って世話をすること。とりもち。なかだち。斡旋あっせん。「下宿周旋する」
事をとり行うために動きまわること。面倒をみること。
「生肉をな、一斤ばかり持参いたすんで、至極の正味を―いたいてくれ」〈魯文安愚楽鍋
国際法上、国際紛争を平和的に解決するため、第三国が外部から紛争当事国の交渉をとりもって援助すること。
ぐるぐると回ること。めぐりあるくこと。周遊。
「ひろく所々を―して」〈洒・雑文穿袋〉
[類語]仲介取り持つ橋渡し仲立ち媒介取り次ぐ介する世話取り持ち口利き口入れ口添え肝煎きもい斡旋あっせん紹介仲買媒酌お節介仲裁調停架け橋渡りを付ける引き合わせる中に立つ間に立つ取り成す

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改訂新版 世界大百科事典 「周旋」の意味・わかりやすい解説

周旋 (しゅうせん)
good offices

国際紛争の平和的処理方法の一つであって,第三国が紛争当事国の和解のために斡旋すること。つまり,第三国が紛争の内容には立ち入らず,紛争当事国の交渉による解決を勧告したり,あるいは交渉のための会場を提供するなどして,外部から和解を促進するための便宜を図ることをいう。1905年に,アメリカ大統領ローズベルトが日露戦争の当事国たる日露両国に対して周旋を行い,ポーツマス条約を締結させたのはその著名な例である。周旋に類似するものとして居中調停(仲介)があるが,両者は第三国の介入の程度によって区別される。すなわち,周旋は第三国が紛争の内容に立ち入ることなく紛争当事国の便宜を図るにすぎないのに対して,仲介は第三国がさらに一歩すすんで紛争の内容に立ち入って当事国の主張の調整を図ったり,あるいはみずから紛争解決案を提示したりすることをいう。しかし両者の区別は実定法上必ずしも明確であるとはいいがたく,実際上も区別しないで行われていることが多い。

 周旋は国際紛争処理方法として古くから認められたものであるが,その手続については,国際法上定まった一般原則なるものは存在しない。一般に,周旋を行う第三者は国家であることが多いが,個人のときもある。また周旋の手続は,個々の場合に,紛争当事国の請求によって行われる場合もあれば,第三国の発意によって行われることもある。いずれの国家も,一般国際法上,周旋を第三国に依頼すべき義務はなく,第三国も他国間の紛争について周旋を行うべき義務を負っているわけではない。周旋の効果は,勧告的であり,法的拘束力をもたない。しかし,周旋を行う第三国は紛争当事国あるいは紛争そのものに密接な利害関係をもつ国家である場合が多く,ことに大国の政治的影響力を背景として行われる場合には,政治的紛争の解決方法としてかなり実効性がある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

普及版 字通 「周旋」の読み・字形・画数・意味

【周旋】しゆう(しう)せん

めぐる。ふるまい。追逐する。また、世話する。民国・曼珠〔劉三に与ふる書〕曼、(さき)にを離るる時、已に(ふくろ)しきこと洗ふが如し。幸ひに旋し、窮を悲しむを致さざりき。

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