子宮下垂、子宮脱(読み)しきゅうかすい、しきゅうだつ(その他表記)Falling of the womb, Prolapse of the uterus

六訂版 家庭医学大全科 「子宮下垂、子宮脱」の解説

子宮下垂、子宮脱
しきゅうかすい、しきゅうだつ
Falling of the womb, Prolapse of the uterus
(女性の病気と妊娠・出産)

どんな病気か

 子宮下垂および子宮脱は子宮の位置の異常のことで、子宮が下降して腟内にとどまっている状態を子宮下垂といい、腟から脱出してくる状態を子宮脱といいます。

原因は何か

 骨盤底支持組織と骨盤底筋の弛緩(しかん)のため、骨盤内の臓器が腟から脱出してくる状態が性器脱であり、老化現象のひとつです。

 脱出してくる臓器により子宮脱、膀胱(りゅう)直腸瘤小腸瘤などと呼ばれています。一種の骨盤底ヘルニアと考えられています。

症状の現れ方

 性器の下垂感や脱出感があり、脱出した部分が歩行の障害になることもあります。脱出部分の粘膜のただれや炎症のために出血などの症状がみられることもあります。

検査と診断

 視診や内診によって、容易に診断できます。さらに腹圧を加えることにより、子宮下垂と子宮脱の程度は増悪(ぞうあく)するので明確に診断できます。

 子宮腟部が左右の坐骨棘(ざこつきょく)を結ぶ線より下降しているけれども、腟口にまでは達していない場合を子宮下垂と呼びます。

 子宮腟部が腟口から下降しているけれども、子宮全体は腟外へ脱出していない場合を不全子宮脱といい、子宮全体が脱出している時は全子宮脱と呼びます(図10)。一般に子宮脱では子宮頸部(けいぶ)延長症が合併することが多くみられます。

治療の方法

 保存的治療としては、硬質プラスチック製のペッサリーを腟内へ挿入し、子宮を上にあげて固定する方法があります。最近では、やや軟らかい材質のペッサリーも使用されており、腟粘膜への刺激もより少なく、挿入・抜去も容易になっています。

 手術療法では性器脱の程度や種類によりさまざまな方法が行われていますが、医療施設や術者によって術式の選択に偏りがみられるのが現状です。

 術式には、ハルバン手術(膀胱底部を縫縮し、前腟壁を形成する手術)と腟式子宮全摘術、ハルバン手術とドレリ手術(子宮円靭帯(しきゅうえんじんたい)腹壁に固定し、子宮底を腹壁まで吊り上げる手術)、肛門挙筋縫縮術(こうもんきょきんほうしゅくじゅつ)、マンチェスター手術(左右の基靭帯を子宮頸部前面で縫合固定し、前腟壁形成と子宮頸部切断をする手術)、腟閉鎖術などがあり、単独にあるいは併用して行われています。

病気に気づいたらどうする

 性器の下垂感や脱出感があれば、産婦人科を受診してください。

竹内 亨


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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