日本大百科全書(ニッポニカ) 「孫復」の意味・わかりやすい解説
孫復
そんぷく
(992―1057)
中国、宋(そう)の思想家。字(あざな)は明復(めいふく)。泰山(たいざん)先生とよばれた。晋州平陽(しんしゅうへいよう)(山西省)の人。進士に及第せず、泰山に退居し、『春秋』の学を修めた。のち范仲淹(はんちゅうえん)らの推薦により秘書省校書郎、国子監直講(国立大学教授)に任ぜられ、最後は殿中丞(でんちゅうじょう)(皇帝御用掛)に至った。師道(師弟子の礼)を確立し、仏教、老荘を異端の学として排斥、伝統教学の儒学を正統の学として復興し、宋初の学術思想界に新生面を開き、胡瑗(こえん)(安定、993―1059)、石介(せきかい)(徂徠(そらい))とともに宋学の先駆的役割を演じた。経(儒学の基本文献)の学問に優れ、その著『春秋尊王発微(しゅんじゅうそんのうはつび)』は伝注に束縛されず、経の意を探り、尊王(王による国家統一)を強調し、宋明(そうみん)の春秋学に影響を与えた。
[福田 殖 2016年2月17日]
『狩野直喜著『中国哲学史』(1953・岩波書店)』▽『楠本正継著『宋明時代儒学思想の研究』(1962/改定版・1964・広池学園出版部)』▽『麓保孝著『孫泰山』(『朱子学大系 第2巻 朱子の先駆 上』所収・1978・明徳出版社)』