新撰 芸能人物事典 明治~平成 「宅孝二」の解説
宅 孝二
タク コウジ
- 職業
- 作曲家 ピアニスト
- 肩書
- 東京芸術大学教授
- 生年月日
- 明治37年 3月10日
- 出生地
- 大阪府 堺市
- 学歴
- パリ音楽師範学校卒
- 経歴
- 醸造業を営む家に生まれる。両親は邦楽を好み、自身も小学校時代から謡曲や仕舞、三味線を習う。やがて洋楽に触れるようになり、堺中学4年の頃からピアノをはじめるとともに作曲にも興味を持つようになった。大正10年同志社大学予科に進むが、2年で中退。その後、ドイツ人パウル・ショルツや亡命ロシア人ヴィリー・バルダスにピアノを、山田耕筰に作曲を学ぶ。昭和2年姉夫婦に従ってパリに留学し、パリ音楽院でナディア・ブーランジェに作曲を、アンリ・ジル・マルシェックスにピアノを教わった。7年一旦帰国して大阪と東京で初の独奏会を開催、この時には自身が作曲した「夜の泉」も演奏している。9年再びパリに渡り、アルフレッド・コルトーに師事してピアノ演奏法を修得。12年帰国してからは東京女子高等師範学校で教え、フランス近代のピアノ演奏法を日本に紹介した。戦後は東京音楽学校(東京芸術大学)を経て、29年から国立音楽大学で教鞭をとり、さらにお茶の水女子大学助教授、東京芸術大学ピアノ科主任教授を務めるなど、我が国のクラシック音楽界の重鎮として活躍した。作曲家としては「弦楽四重奏曲」が21年の日本音楽連盟委嘱作品に入選。27年には「ソナチネ」がジェノバ国際作曲コンクールの第1位に選ばれた。他方、22年尾高尚忠指揮の日本交響楽団とともにガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルー」を演奏し、シャンソンやジャズバンド向けの曲も手がけるなど、異色の音楽家としても知られる。30年新東宝製作、松林宗恵監督の「風流交番日記」を手がけて以来、映画音楽家としても活動し、市川崑監督「処刑の部屋」「満員電車」、堀川弘通監督「女殺し油地獄」、松林監督「社長太平記」「がんばれ!盤獄」、斉藤寅次郎監督「誰よりも金を愛す」など数多くの映画に参加した。他の作品に「女の24時間」「チェムバロと室内楽のための組曲」「ブラック・パルティータ」「カルメンシータ」などがある。
- 受賞
- ジェノバ国際作曲コンクール第1位〔昭和23年〕「ソナチネ」
- 没年月日
- 昭和58年 5月3日 (1983年)
出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報