仕舞(読み)シマイ

デジタル大辞泉 「仕舞」の意味・読み・例文・類語

し‐まい〔‐まひ〕【仕舞(い)/終い/了い】

物事が終わること。物事をやめること。「これで―にする」
物事の終わりの部分。最後。「本を―まで読みとおす」「―にはみんな怒りだした」
品物が売り切れてなくなること。「今日はいちごは―だ」
化粧をすること。〈和英語林集成
信用取引清算取引で、転売または買い戻しによって、取引関係を精算すること。手仕舞てじま
節季、特に年末の収支決算
「毎年の―には少しづつ足らず」〈浮・胸算用・四〉
処置すること。始末。決着。→じまい(仕舞い)
「ちと処をかへ、堺の津に行き、―をせんはいかに」〈咄・醒睡笑・七〉
[類語]終わり最後最終ラスト末尾どん詰まりおしまい終了終結終焉しゅうえん終末果てし幕切れ閉幕打ち止めちょんかんりょうジエンド結末結び締めくく結尾掉尾とうび・ちょうび終局終幕大詰め土壇場どたんばエンディングフィニッシュフィナーレ

し‐まい〔‐まひ〕【仕舞】

能・芝居・舞踊などで、舞ったり、演技したりすること。
の略式演奏の一。囃子はやしを伴わず、面も装束もつけず、シテ一人が紋服・はかまで、だけを伴奏に能の特定の一部分を舞うもの。

じ‐まい〔‐まひ〕【仕舞(い)】

[語素]
名詞に付いて、それを終える意を表す。「店仕舞い」「仕事仕舞い
動詞の未然形に打消しの助動詞「ず」を添えたものに付いて、(…しないで)終わってしまった、の意を表す。「行かず仕舞い」「言わず仕舞い

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精選版 日本国語大辞典 「仕舞」の意味・読み・例文・類語

し‐まい‥まひ【仕舞】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 能、舞踊、演劇などで舞ったり、演技したりすること。
    1. [初出の実例]「国之猿楽之内、器用ならんを為上洛仕舞を習はせ候者、後代迄可然歟」(出典朝倉孝景条々(1471‐81)五条)
  3. 能の略式演奏の一つ。楽器演奏なしで装束をつけず、シテ一人が謡だけを伴奏に紋服袴で能の特定の一部分を舞うもの。
    1. [初出の実例]「能、教ゆる事。一番に、仕舞を教えよ。さて、やうやう仕舞覚えたる時、二番に身なりを直せ」(出典:八帖花伝書(1573‐92)八)

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改訂新版 世界大百科事典 「仕舞」の意味・わかりやすい解説

仕舞 (しまい)

能の用語で略式の上演形式の一つ。能一曲のうち,クセやキリなど,シテの所作見せ所だけを4~5名の地謡だけで舞う。演者は面,装束をつけず,上下または紋付袴姿で,仕舞扇を用いる。小道具,作り物は原則として用いない(例外的に盲目杖,長刀,床几(しようぎ)は用いる)。シテ1人で演じるのが普通だが,特殊なものにシテとツレで演じる《竜虎》《舎利》,シテとワキで演じる金剛流の《大蛇(おろち)》,ワキ1人で演じる《羅生門》(とくに〈脇仕舞〉ともいう),ツレや子方の演じる観世流の《室君(むろぎみ)》などがある。

 〈仕舞〉という言葉は,所作や能の舞い方を意味する術語として室町期から用いられていた。また,酒宴の席などで能の一部分を謡い舞うことも行われていたが,それは〈肴舞〉(または座敷舞)と呼ばれ,余興的な芸であった。現在のような鑑賞芸としての仕舞の成立は,江戸初期まで下るようだ。元禄期(1688-1704)には盛んに行われるようになるが,当時は上衣に小袖を用いた〈壺折仕舞〉や,シテとワキとで演じる例などが多くみられる。〈仕舞〉という語が現在のような内容を意味する例は延宝(1673-81)ころに見え,同時に〈舞囃子(まいばやし)〉(略式上演形式の一つで囃子を伴い,舞の部分を主とする)を意味する例も多く,まだその用語法が確定していない。舞囃子も江戸初期にその萌芽がみられ,5代将軍徳川綱吉が愛好して自身演じたことから元禄期に盛んとなった。当初は同じく〈仕舞〉と記されていたが,区別して〈仕舞囃子〉と記されるようになり,元文(1736-41)ころからは〈舞囃子〉になったようである。仕舞や舞囃子のような特殊な演奏形式が盛んになったのは,将軍綱吉の例にみるように素人が舞うようになったことが大きな理由だが,その背景には,謡の師匠(謡教授の専門家)が仕舞の師匠をも兼ねていたことが挙げられている。狂言にも同じ演奏法があり,小舞という。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「仕舞」の意味・わかりやすい解説

仕舞
しまい

能の略式演奏の一つ。クセ・切(きり)・段・道行(みちゆき)・クルイなど、能のなかから独立しうる一部分を抜き出し、シテ1人で演ずるもの。まれに『二人静(ふたりしずか)』『橋弁慶』のようにツレ・子方を伴うものもある。演ずる部分は流儀により定まっている。数分のものから十数分に及ぶ仕舞もある。能面も装束も着けず、紋服・袴(はかま)、あるいは裃(かみしも)姿。囃子(はやし)も用いず、地謡(じうたい)だけで舞う。能の稽古(けいこ)は仕舞から始めるのが普通で、いわば能のデッサンであるが、名人の仕舞には能の精粋ともいうべき滋味がある。仕舞扇を手にして舞うのが原則であるが、長刀(なぎなた)や杖(つえ)も用いられる。狂言にも数は少ないが同種の略式演奏があり、小舞(こまい)という。

[増田正造]

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百科事典マイペディア 「仕舞」の意味・わかりやすい解説

仕舞【しまい】

能の略式演奏様式。能の一部分(クセ・キリ・段・道行(みちゆき)・狂いなど)だけを,シテ1人で(まれにはツレ・子方を伴うこともある),紋服,袴(はかま)のまま装束をつけず,地謡(じうたい)だけで演ずること。これに,囃子が加わる場合を舞囃子といい,演奏部分が長くなる。
→関連項目小舞

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仕舞」の意味・わかりやすい解説

仕舞
しまい

能楽用語。能の略式の演じ方の1つ。型どころ (クセ,キリ,段,道行,狂など) を,舞い手1人が紋服,袴の姿で,4人程度の地謡だけで舞うこと。狂言には小舞といい,能の仕舞に似た舞がある。

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世界大百科事典(旧版)内の仕舞の言及

【能】より

…(9)小謡(こうたい) 上歌などの短い部分を,儀礼的な意味で謡う。(10)仕舞 クセ,クルイ,ノリ地などの舞いどころを,囃子なしに紋服等で舞う。(11)一管(いつかん) 笛1人で囃子事を変奏する。…

※「仕舞」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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