国指定史跡ガイド 「宇摩向山古墳」の解説
うまむかいやまこふん【宇摩向山古墳】
愛媛県四国中央市金生町にある長方形墳。四国の瀬戸内側ほぼ中央部にあたる宇摩平野の東部を流れる金生(きんせい)川の東岸、標高約20mの丘陵の先端に立地する。1つの墳丘に南に開口する2つの横穴式石室を並列にもち、東側の石室を雄塚(おんづか)、西側のものを雌塚(めんづか)と呼ぶ。石室の規模から「伊予の石舞台」とも呼ばれてきたが、全容は不明だった。2003~2009年(平成15~21)に行われた発掘調査によって、墳丘北側で見つかった周溝や南側の列石などから、墳丘の規模が南北46m、東西70mと推定される長方形墳と判明した。西の1号石室(雌塚)は全長10.8m、玄室は長さが3.9m、幅2.5m、高さ2.6mであり、東の2号石室(雄塚)は半埋没状態であるが全長14.3m以上、玄室の高さが3.8mと巨大なものである。石材は中央構造線外帯(南側)で産出される結晶片岩が使われており、両石室をあわせて数百トンを超える石材を遠路運び入れたとみられる。築造時期は、1号石室出土の須恵器(すえき)などから7世紀前半と推定される。埋葬施設については十分な調査がなされておらず不明である。四国最大の長方形墳の築造は、古墳時代終末期における大和政権とこの地域との関係や政治状況を考えるうえで重要であり、2011年(平成23)に国の史跡に指定された。JR予讃線川之江駅からせとうちバス「JA金生前」下車、徒歩約5分。