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宣伝芸術 せんでんげいじゅつpropagandistic art

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宣伝芸術
せんでんげいじゅつ
propagandistic art

特定の主義主張や思想を民衆の間に浸透させることを目的とした芸術。時の為政者ないし支配階級によるいわば上からの芸術であり,真の芸術意欲から生れるとはかぎらず,したがって芸術的には問題視されるものも少くない。広い意味では,古代アッシリア,ペルシア,エジプト人の芸術など,国王の絶対的な権力,あるいは神人としての絶対的な地位を民衆に印象づけるために生れた芸術を宣伝芸術とみることもできる。帝政ローマやヨーロッパ中世の芸術についても同様のことがいえるが,特にイエズス会を中心とする対抗宗教改革期のイタリアやスペインの芸術には宣伝芸術的な性格が認められる。またルイ 14世に代表される絶対主義体制下のバロック美術にしても,国王の地位と権力を誇示し,あるいは国威を高揚させるという宣伝的な性格がしばしばみられる。フランス革命およびナポレオン帝政時代のダビッドを中心とする芸術にも宣伝的な要素はときおり認められる。以上の芸術は,絵画,彫刻にしろ,作品としては原則として一点限りのものであり,不特定多数を対象とする宣伝の具としてはその影響力には限りがあった。ルターの友人でもあったクラナハ (父) とそのグループによる宗教改革運動のためのおびただしい木版画は,宣伝パンフレット的な性格の強いもので,上記のものとは異なる本来の宣伝芸術といえるが,芸術的価値は高いとはいえない。新聞,ラジオ,テレビなどのマスコミが発達し,国家間の経済的,政治的,思想的対立が深まり,多様化した 20世紀に入ると,宣伝芸術は国家的な指導のもとにその傾向を強めている。戦争画はその一つであり,特にヒトラー時代のドイツではナチズムを謳歌する露骨な宣伝芸術が横行した。またメキシコ革命を主題とする 1920年代の J.オロスコ,D.シケイロス,D.リベラなどのモニュメンタルな壁画や,30年代の不況下のアメリカにおける公共事業促進局 WRAの肝いりによる国民主義的な芸術にも宣伝的な性格が強く,またかつてのソ連その他東欧圏のいわゆる社会主義リアリズムにも宣伝芸術的な性格は多かれ少なかれ認められた。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

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