家事債務履行確保制度(読み)かじさいむりこうかくほせいど

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「家事債務履行確保制度」の意味・わかりやすい解説

家事債務履行確保制度
かじさいむりこうかくほせいど

家庭裁判所が家事審判または家事調停によって定めた義務履行をはかる制度。家事審判または家事調停に基づく債権者は,それらを債務名義として強制執行することができるが (家事審判法 15,21条1項) ,家事債務は,通常債権者の生存に重大な影響をもち,少額給付を長期間にわたって求めるものが多く,また債権者が強制執行手続を利用する煩雑と費用に耐えない場合が少くない。このような事情から,1956年の家事審判法の改正 (法律 91号) にあたり,新たに設けられた制度である。その内容は第1に家庭裁判所による履行勧告であって,権利者の申し出により,家事債務の履行状況を調査し,義務者に対してその履行を勧告できる (家事審判法 15条の2,25条の2) 。第2は義務の履行命令であり,裁判所は財産上の給付義務の履行を怠った者に対し,権利者の申立てにより,義務の履行を命じることができ (15条の3,25条の2) ,この命令に従わないときは過料の制裁を科する (28条) 。第3は金銭寄託であって,裁判所は義務者の申し出により,権利者のために金銭の寄託を受けることができる (15条の4,25条の2) 。これらの制度はいずれも実務上活発に利用され,現実に大きな成果をあげている。

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