日本大百科全書(ニッポニカ) 「寄生貝類」の意味・わかりやすい解説
寄生貝類
きせいかいるい
他の動物(寄主)の体表や体内につき、その寄主から栄養をとって生活する貝類をさす。寄生する貝類は腹足類が多いが、ごく少数の二枚貝類もある。なお、寄主の体表にすむものは、共生とみなすことのできるものも少なくない。
寄主は棘皮(きょくひ)動物(ウニ、ナマコ、ヒトデ、ウミユリなど)、腔腸(こうちょう)動物(イソギンチャク、イシサンゴ、トゲトサカ類など)がもっとも多いが、ほかにも軟体動物(主として貝類)、環形動物、星口(ほしぐち)動物なども含む海産無脊椎(むせきつい)動物の広い範囲にわたる。また、寄生の形態もときどき寄主につく臨時寄生から、つねに寄生している定留寄生まである。これら寄生性のものは、ときには歯舌を失い、寄主の体液を吸うように特殊化している。一方、一見体表に外部寄生するようにみえるものでも、ツグチガイやテンロクケボリガイなどのように口器の形態や繁殖生態から寄生とはみなしにくく、それらの対象を単に食餌(しょくじ)として常住するだけと思われるものがあり、注意を要する。
外部寄生のものは棘皮動物につくヤドリニナ類やセトモノガイ、イシサンゴなどにつくサンゴヤドリガイ類、クルマガイ類あるいは二枚貝の殻表につくカツラガイ類などの巻き貝のほか、棘皮動物、星口動物、腔腸動物の体表につくブンブクヤドリガイ科の二枚貝が主要なものである。内部寄生もヤドリニナ科の巻き貝とエントコンカ科の二枚貝がある。また、グロキジウム幼生の間、魚の体表に付着して体液を栄養にする淡水性のイシガイ類も特殊な寄生生活を送るといえよう。
[奥谷喬司]