寝覚（読み）ねざめ

精選版 日本国語大辞典

ね‐ざめ【寝覚】

1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
   1. ① ( ━する ) 眠りからさめること。眠りの途中で目をさますこと。
      1. [初出の実例]「暁(あかとき)の 寝覚(ねざめ)に聞けば」(出典：万葉集（８Ｃ後）六・一〇六二)
      2. 「ねさめして久しくなりぬ秋の夜は明けやしぬらむ鹿ぞ鳴くなる〈源道済〉」(出典：新古今和歌集（1205）秋下・四四七)
   2. ② 寝ることと目覚めること。また、眠っている時と目覚めている時。いつも。
      1. [初出の実例]「ねざめにわすれ給ふなとときをしへ」(出典：幸若・しつか（室町末‐近世初）)
   3. ③ 「ねざめさげじゅう（寝覚提重）」の略。
      1. [初出の実例]「寝覚につめて沖は蛤蜊 たのしみは此内に有鍋の蓋」(出典：俳諧・西鶴大矢数（1681）第三一)
   4. ④ 香木の名。分類は伽羅(きゃら)。香味は甘酸。六十一種名香の一つ。なお、真南蛮の香も知られる。
      1. [初出の実例]「寝覚(ネザメ)、真那斑上、但本銘聞不_レ申候慥に不_レ存候」(出典：建部隆勝香之筆記（香道秘伝所収）（1573）)
2. [ 2 ] 謡曲。脇能物。観世流。作者未詳。古名「三帰(みかえり)」。三帰の翁から長寿の霊薬をもらうために信濃国寝覚の床につかわされた延喜帝の勅使は、老きこりに寝覚の神の居所を尋ねる。老人は自分がその翁であると明かし、のちほど長寿の薬を与えようといって消える。やがて天女をつれた寝覚の神と二龍が現われて舞を舞う。

寝覚の語誌

「万葉集」には、例が多くないが、平安期以降の和歌ではしばしば用いられる。夜、寝床に体を横たえてはいるものの、物思いのため意識が冴えて眠れない状態が、原義と考えられる。

い‐さめ【寝覚】

1. 〘 名詞 〙 ( 「いざめ」とも。「い」は眠りのこと ) ねざめ。
   1. [初出の実例]「われのみと思ふは山のいさめ里ゐさめに君を恋ひあかしつる」(出典：古今和歌六帖（976‐987頃）五)

出典　精選版 日本国語大辞典

世界大百科事典（旧版）内の寝覚の言及

【夜半の寝覚】より

…平安後期の物語。現存本の題名は《寝覚》または《夜の寝覚》。作者は菅原孝標女（たかすえのむすめ）と伝えるが，確かでない。…

※「寝覚」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」