名歌を分類して作歌の指針とした平安中期の類題和歌集。分類基準は天地人の三才に草木鳥虫を配し,それらを25項,516の題に下位分類した。編者は未詳。成立年代は10世紀後半,《後撰集》より後,《拾遺集》より前と推定されている。流布本(1669年刊本)の歌数は約4270首(重出歌,類似歌の処理の仕方で数は異なる)。《万葉集》からの1200首,《古今集》からの700首をはじめ,広い範囲から資料をもとめ,本書にのみ見える作はほぼ1000首程度と推定される。これらはおおむね古い作風で,平安前期の和歌資料として質量ともに貴重である。現存の本文は木版本のほか写本類もあるが大差はない。中世以降の変型もみとめられるが,総合的には信頼するに足る。ただ《袋草紙》には歌数4696首と記され,現存本より相当多い。後世の典籍からこの遺を拾う作業が契沖の《和歌拾遺六帖》以来行われているが未完結である。
執筆者:奥村 恒哉
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和歌の類題別私撰(しせん)集。略して『古今六帖』とも。編者・成立年代未詳。兼明(かねあきら)親王、源順(したごう)の編とする説もある。貞元(じょうげん)・天元(てんげん)年間(976~983)の成立といわれる。『万葉集』から『古今集』『後撰集(ごせんしゅう)』のころまでの歌約4500首を収める。天象、地儀、人事、動植物の4項目を、さらに516題に細分し、それぞれの題にその例歌を分類配列している。後世の俳諧(はいかい)歳時記のように、分類された題のもとにその例歌を掲げているのであり、その構成法などから、古来、作歌のための手引書といわれてきた。もとより平安時代の和歌は、たとえば「蛍」といえば火、「吉野」といえば桜か雪などというように、歌のことばが一定の連想作用を促すことばとして発達していた。人々がこうした手引書をもとに、歌ことばを通して作歌法を学んだらしいことは想像にかたくない。
[鈴木日出男]
『『新編国歌大観2 私撰集編 歌集』(1984・角川書店)』
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…例えば,《万葉集》の中世以前の古訓を数多く知ることができる。また《古今和歌六帖》は平安時代には現存本より相当大きな本が行われた(《奥儀抄》)が,本書によって失われた《古今和歌六帖》歌,いわゆる〈六帖拾遺歌〉を大量にひろうことができるのである。その他,同様の事例は枚挙にいとまなく,本書は和歌研究史上,非常に貴重なものである。…
…和歌を題材別に分類して編集した私撰歌集の一種で,これを模倣して俳諧の類題発句集も編集された。歌集では,今日知られる最古のものは10世紀後半の《古今和歌六帖》で,《万葉集》《古今集》《後撰集》などの約4500首の歌を天象,地儀,人事,草虫木鳥の25項目,516題に分類する。名所別の類題集では里村昌琢編の《類字名所和歌集》(1617)が有名である。…
※「古今和歌六帖」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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