日本大百科全書(ニッポニカ) 「小児臓器移植」の意味・わかりやすい解説
小児臓器移植
しょうにぞうきいしょく
15歳未満の小児の脳死による臓器移植。日本では、以前は臓器移植は15歳以上に限られていたため、小児の臓器移植が必要な場合は、海外で手術を受けるしかなかった。しかし、2008年に国際移植学会が表明した提供臓器の自国内確保を求めるイスタンブール宣言、世界保健機関(WHO)が打ち出した渡航移植を禁止する勧告を受けて検討を重ねた結果、臓器移植法が改正され、2010年(平成22)7月に施行された。この法改正により15歳未満の小児の法的脳死判定および臓器提供が認められ、また本人の提供意思が意思表示カードなど書面で残されていない場合でも、家族の同意だけで提供が可能となった。ただし虐待を受けた可能性のある小児は除外される。そのため臓器提供の意思が明らかに表示された場合でも虐待の有無が慎重に確認されたうえで、移植実行が検討される。改正法では同時に、脳波検査が可能な生後12週以降であれば乳幼児であっても家族の承諾だけで臓器提供ができるように改正された。しかし、大人に比べ回復能力が高いとされる乳幼児の脳の脳死判定をどこまで正確に行うことができるか、また心臓死に至らない脳死をどう扱うかという従来からの問題も解決されたわけではない。
近年の日本での15歳未満からの臓器提供は、心停止下が2009年1例、2010年1例、2012年1例で、脳死下は2011年1例、2012年1例であった。2012年の脳死下臓器提供は6歳未満の小児からで、この年齢からの提供は初めてのケースであった。
[編集部]