近世武術の一流派で、剣を表、和(やわら)術(柔)を裏とし、ほかに槍(やり)、薙刀(なぎなた)、棒、水馬、水練などの業(わざ)を含んで行われた。流祖は小栗仁右衛門信由(のぶよし)(1589―1661)。信由(正信)は三河譜代(ふだい)の臣又市(またいち)忠政(信安)の二男で、初め徳川家康の小姓(こしょう)を勤め、大坂の役に活躍して、750石を知行(ちぎょう)した。柳生宗矩(やぎゅうむねのり)門下の出淵(いずぶち)平兵衛盛次に剣を学び、ついで同門の駿河鷲之助(するがわしのすけ)の協力を得て組合(くみあい)・組討(くみうち)45か条(甲冑伝(かっちゅうでん)・武者取(むしゃどり)という)を創案し、1616年(元和2)柳生家の許可を受け、表裏72か条をもって新流をたて、小栗流を称した。門弟は前後3600余を数えたが、とくに土佐藩では、23年藩主山内忠義の世子忠豊が信由に師事して剣を学び、忠義の小姓役であった朝比奈(あさひな)丹左衛門可長(よしなが)(1626―83)が53年(承応2)和術一子相伝を授与されて土佐に帰り、和術師範役に任じ、一藩内に流行した。なお幕末には和術より剣術に重点が置かれ、坂本龍馬(りょうま)も同流の日根野弁次の門に入り剣術を習ったという。
[渡邉一郎]
『平尾道雄著『土佐武道史話』(1961・高知新聞社/『平尾道雄選集 第4巻』所収・1970・高知新聞社)』
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