朝日日本歴史人物事典 「尾上新七」の解説
尾上新七(初代)
生年:延享2(1745)
江戸中期の歌舞伎役者。俳名芙雀。屋号南部屋。江戸生まれ。初代尾上菊五郎門弟。佐之助を名乗って,12歳で江戸中村座初舞台。16歳で春五郎,20歳で七三郎と改名して上坂。明和3(1766)年,22歳のとき新七と改名した。以後京,大坂と舞台を重ね,38歳で立役上上吉に進んだ。寛政8(1796)年に鯉三郎と改名。写実的で淡泊な芸風,小柄ながら上品な風姿で,和実という和らかみも物堅さもある役柄に優れ,おっとりとした「承知,承知」の殿様役では無類。「桂川連理柵」の長右衛門,「五大力恋緘」の源五兵衛,「拳褌廓大通」の今木伝七など,彼が初演して,その芸風を後世まで伝えるものも少なくない。新七の名跡は,昭和期までに5代を数えた。
(青木繁)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報