ジェームズ・ボールドウィンの小説。1953年刊。1935年早春、14歳の黒人少年ジョンが神への回心を経験した1日の事件を枠組みにし、その義父、伯母、母親の過去における堕落と贖罪(しょくざい)の物語をフラッシュ・バック手法で描く。現実の背景となるのはハーレムの黒人教会だけだが、各人の過去が随所に投入されているため、時間はときに南北戦争当時までさかのぼり、舞台も南部から北部へと拡大される。見方によっては、黒人一家の壮大な年代記ともいえる構成をとる。作者は過去の黒人の生活のなかに、アメリカ黒人全体の「私生児」としての呪(のろ)われた宿命をみている。アメリカ黒人の主体の形成に触れる物語であり、「抗議小説」の傾向を脱した指標的作品。
[関口 功]
『斎藤数衛訳『山に登りて告げよ』(『黒人文学全集3』所収・1968・早川書房)』
貨幣 (名目) 賃金額を消費者物価指数でデフレートしたもので,基準時に比較した賃金の購買力を計測するために用いられる。こうしたとらえ方は,名目賃金の上昇が物価の上昇によって実質的には減価させられている...