改訂新版 世界大百科事典 「山ノ上碑」の意味・わかりやすい解説
山ノ上碑 (やまのうえひ)
上野(こうずけ)三碑の一つ。〈辛己(巳)歳〉(681・天武10)の干支をもつ日本でも屈指の古碑。高崎市山名町山神谷の丘陵上に切石組みの横穴式石室をもつ円墳〈山ノ上古墳〉の西傍に立つ。高さ1.1m,幅0.5mの輝石安山岩自然石で,平坦な面に4行53字を楷書体で記すが,これには隷書的特徴も認められる。〈佐野三家〉を管掌した健守命の孫である黒売刀自と,新川臣の子孫である大児臣との間にできた〈長利僧〉が,その母のために記したもの。山ノ上古墳の被葬者の墓碑とする見方もあるが,〈長利僧〉は後段には〈放光寺僧〉とも書かれており,このことから一族の尽力により寺院が建立され,僧となる者が出たことを,祖先供養の意味を含めて記した信仰活動の記念碑とみられる。金井沢碑(726)ともつながる内容をもち,この地方の仏教活動のあり方,また地方豪族間での婚姻形態を知る上で貴重。特別史跡。
執筆者:前沢 和之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報